【鬼滅の刃】氷の刃【参】 (ページ3)

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氷と妹ページ3

鬼の兄妹を見て思ったことがある。

妹ときちんと喧嘩をしていれば。

正直に自分の気持ちを伝えられる人間だったら。

違ったのだろうか。

おじいちゃんに私と小雪が拾われる前の話だ。

私の生まれた家で父は絶対だった。
私はいつも父の機嫌を損ねないよう立ち回り、悲しみに暮れる母に声をかけて励ました。

父と母のことは、嫌いだったのだと思う。

その気持ちを抑えつけながら、父と母の望む物になる。そんな毎日だった。

妹の小雪は本当にすごい奴で、私ができないことを軽々とやってのける。

殴られるのもお構いなしで父に反発し、泣いてばかりの母にも「お姉ちゃんに甘えるな」と喝を入れた。

父はもちろん小雪に暴力を振るい、母は妹の言葉に癇癪を起こした。

妹の言葉は正しいのに、理不尽な暴力は止まない。

私が選んだのは、妹の盾となることだった。

父が妹を殴ろうとすれば間に入ってそれを止め、妹に罵倒を浴びせる母を宥めた。

「お姉ちゃんは何にもわかってない」

そう言って妹が泣いたのは、私が初めて父の機嫌を損ねて殴られた日だった。

ある日、母が妹を殺そうとした。

母の足音で目を覚ますと、包丁を持った母がすやすやと眠る妹に包丁を向けていた。

母からは、憎悪の音がした。疎ましい。邪魔だ。死ねばいい。

私にはそんな音をさせないくせに妹にはそんな音を出すのか。

怒りが沸いた。

「殺すなら私にして欲しい」

自分でも驚くほど冷たい声が、自分の口から出た。

妹を守れないこんな家はいらない。

捨ててやる。

「小雪、お散歩行こう」

優しい声で小雪を起こす。大丈夫だ。これからはきっと幸せなことがある。

「お姉ちゃんが守るからね。大丈夫だよ。」

雪の降る日、妹の手を引きながら私はそう言った。

小雪は、何も言わなかった。

鬼に襲われた時、初めて自分の無力さを理解した。

おじいちゃんに剣を教えてもらう。そう言った時、小雪は眉をひそめて、

「お姉ちゃんが決めたなら、応援する。」と、不機嫌そうに言った。

小雪が鬼になった。

小雪は、自分がどうなってしまうのかを悟ったのだろう。自分を斬れと私に刀を差しだした。

私は妹を斬ることができる人間だった。

何が守るだ、と自分に激しい怒りが沸いた。

もしお互いの思いを、正直に吐き出す事が出来ていたら。

小雪も私を守ろうとしていた事に、もう少し早く気づいていれば。

私は剣を握らないで、小雪と穏やかに過ごす。

そんな未来もあったのだろうか。