鬼からの提案 ページ46
炭治郎が目を開けると、しゃがれた声が上から降ってきた。
「なんだ、お前まだ生きてんのか。運のいい奴だなぁ」
妓夫太郎が、こちらを見下ろすようにのぞき込んでいる。
「まぁ運がいい以外取り柄がねぇんだろうなぁ可哀そうになあ。お前以外の奴は皆もう駄目だろうしなぁ。」
地に伏した仲間の姿が見えた。
屋根の上で伊之助が倒れている。Aが地面に落ちて、色んな所から血が出ている。
善逸は瓦礫に押しつぶされている。
自分だけが、残っていた。
「猪は心臓を一突き。紫陽花羽織は毒にやられてもう動けねぇ。心拍も弱まってるしじきに死ぬだろうなぁ。黄色い頭は瓦礫に押しつぶされて苦しんでるから死ぬまで放置するぜ。柱も弱かったなぁ威勢がいいだけで。毒にやられて心臓も止まって死んじまった。お陀仏だ。」
鬼が笑う。
「みっともねぇなあお前ら。本当にみっともねぇなぁ。特にお前は格別だ。お前の背負っている箱からはみ出してるのは血縁だな?わかるぜ、鬼になって手持ちが近いのは。それは姉か?妹か?」
炭治郎は戸惑っていた。
鬼は、いつでも炭治郎を殺せる状態にいた。
それなのに、会話を楽しんでいるように見えたのだ。
妹だ、と答えると妓夫太郎はヒヒッと厭な笑い声を上げて、
「みっともねぇなぁ、全然妹守れてねぇじゃねぇか」と言った。
怒りで、目の前が赤く染まった。
そんな炭治郎には目もくれず、まぁ仕方ねぇか、と妓夫太郎は話し続ける。
「鬼の妹よりも弱いのは当然だが、それにしたってみっともねぇ。兄貴だったら妹に守られるんじゃなく守ってやれよなぁこの手で」
そう言いながら、妓夫太郎は炭治郎の手を取る。
ボキッ、と言う音と、激痛が走った。
指が折れた音だった。
妓夫太郎は怒りに震える炭治郎に様々な罵倒を浴びせる。
虫けら、ぼんくら、のろまの腑抜け、役立たず。なんで生まれてきたんだお前は。
呪いのように、炭治郎の耳に妓夫太郎の言葉が纏わりつく。
「どうする?弱いボロボロのみっともねぇ人間の体で俺の頸を斬ってみろ。さぁさぁ!!」
妓夫太郎の言葉に呆然とした様子の炭治郎。
その手は、近くにある遊女の香り袋を引き裂いていた。
まるで、やり場のない怒りをぶつけているかのように。
「そうかそうか。土壇場で心が折れたか。みっともねぇなぁ本当にみっともねぇ!!」
高らかに妓夫太郎が笑い声を上げてから、
「そうだ、お前も鬼になったらどうだ!」
楽しそうな声色で、そう提案した。
81人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時