五つの型 ページ41
妓夫太郎と対峙したAは、おじいちゃんとの最後の会話を思い出していた。
氷の呼吸について教えられたことは二つ。
鬼を恨まないこと。そして、氷の呼吸の型についてだ。
氷の呼吸には五つの型がある。
頸を斬る攻撃技は五つの型のうち三つのみで、残りの二つは防御のための技。
おじいちゃんは、力の強い人だった。
もし、おじいちゃんが氷の呼吸を使ったら。
私みたいに弱点を探さなくても、きっとどんな硬い鬼の頸も斬れたのだろう。
先程の妓夫太郎の動きを頭の中で反芻する。
頸が真後ろに回転した妓夫太郎を見て、直感したこと。
私は、この男の頸を斬ることができない。
「さっきから防戦一方だなぁ怖気づいたのかぁ?」
「誰が怖気づいたって?お前こそ血の鎌がさっきから出せてねぇぞ。俺とAの速さについてくるのが精一杯なんじゃねぇのかぁ?」
刃を振るい、宇髄さんの攻撃に合わせて隙を作るが、私の刀は簡単に鎌に弾かれた。
集中しろ、と自分自身を叱責する。
宇髄さんに炭治郎、善逸に伊之助、四人の命がかかっている。
ここで、どうしても斬らねばならない。
宇随さんと私の刃が何度も鬼の頸を襲うが、決定打にはならない。
一進一退の攻防が続いていた。
考えろ。
頭を回せ。
力がなくても、速さなら私が上だ。
速さを乗せながら鬼の頸に刃を通す方法を考えろ。
頸の中で一番脆い場所は喉の下辺り。
例え弱点の位置が真後ろに移動しようとも、正確に貫く方法は…
その時、脳裏に浮かんだのは冨岡さんの、流れるような突き。
雫波紋突きだった。
――――そうだ。突きだ。
一旦後ろに退き、体制を整える。
足に力を集中させ、頭の中で今思い浮かんだ動きを整理する。
頸の脆い部分を突けば、力がなくても刃は通る。
例え頸が後ろに回っても、貫けば問題ない。
貫いたら体を捻って刃を動かす。刃の角度は手首で調整する。
突きで頸の弱点を固定してから、円を描くように一太刀で斬る。
私の速さと、手首の柔らかさがあれば可能なはずだ。
斬れる。
確信と共に、体は動き出した。
氷の呼吸のまま、妓夫太郎の頸を斬るために疾走する。
「氷の呼吸 陸ノ型 氷柱時雨」
妓夫太郎が危機を察知し、避けようと後退する。しかし、
(…こいつ、まだ速くなるのか?)
先程よりもAの速度は上がっていた。
Aの刃が妓夫太郎へと届く。
Aの薄い刀身は、鬼の頸の最も脆い部分を正確に貫いていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時