会いたい ページ5
涙を流しながら、ありがとうと言う
ぼろぼろと体が崩れて、着物だけが残った。
この光景は何度見ても苦手だった。
「……やっと、終わったな」
落ち着いた声で、呟いた。
おじいちゃんと妹弟の敵を討ったら、私も死ぬつもりだった。
これでおじいちゃんの思いも分かったし、妹と弟の仇も討った。
私にしては上出来だったと思う。干天の慈雨しか使えなかったけれど、最後には氷の呼吸が使えた。
うん、やり残したことはもうないな、と思った。
瞳を閉じる。瞼が重くなって、瞼の向こうの光もだんだん小さくなる。
やっと終わった、ともう一度呟くと、
「何言ってんだ馬鹿A!!やっぱり死ぬつもりだったんじゃねぇか!!」
騒がしい音が聞こえて、目を開ける。
そこにはいつも任務に着いて来てくれた烏がいて、ぎゃんぎゃんとわめいていた。
「お前な!お館様の所へ俺を行かせた時から嫌な予感はしてたんだよ!!何だよその傷!!また義勇に怒られるぞ!!」と烏は言う。
あぁ、そうだな。冨岡さんは、怒るだろうな。
そう思ったら、いろんなことが脳裏を駆け巡った。
走馬灯、というやつなのかもしれない。
冨岡さんからは、色んなものをもらった。
継子にさせてもらった。
一緒にご飯を食べてくれた。
私が死なないように、たくさんのことを教えてくれた。
最終選別の時に、死ぬなと言ってくれたこと。
無茶をして頬を叩かれたこと。
優しく撫でてくれたこと。
思い出すのは冨岡さんのことばかりだった。
どうしてこんな時に思い出してしまうんだろう。
もう十分だ、と思っていたのに。
あの波の音がもう一度聞きたかった。
あの優しい波の音を思い出すと、涙が零れてくる。
「冨岡さんに、会いたい」
手の甲で目元を隠して、泣きながら烏にそう告げた。
烏は、「それを先に言え馬鹿A!!」とすぐに翼をばたつかせながら、
「すぐ呼んでくるから、絶対くたばるなよ!絶対だからな!!」
善逸みたいなことを言いながら飛んで行く。
小さくなっていく黒い影を見送る。
なんだか、すごく疲れた。
瞼が重い。
だけどもう少し、もう少しだけ、そっちに行くのは後からでもいいかな。
ごめんね、と呟いておじいちゃんと妹弟を思い出す。
「おねぇちゃん」と、妹の声が聞こえる。
そうだった。妹は、生きてと言ったんだった。
瞼の裏の家族は、みんな穏やかな顔で微笑んでいる気がした。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時