限界 ページ29
「ごちゃごちゃ五月蠅いわね。昔の事なんか覚えちゃいないわ。あたしは今鬼なんだから関係ないわよ。鬼は老いない。食うために金も必要ない。病気にならない。死なない。何も失わない。」
そして、と鬼は笑う。
「美しく強い鬼は何をしてもいいのよ」
「わかった、もういい。」
炭治郎が鬼に向けて疾走する。鬼からは無数の帯が炭治郎に向けて放たれていた。
(さぁ、止まれないでしょう馬鹿だから。逃げ場のない、交差の一撃。)
花街を支配するために分裂していた鬼の体はひとつに統合され、先程とは比べ物にならない速度になっていた。
(お終いね。さようなら。あたしは柱の方に行くから。)
帯が刀にぶつかる。その寸前。
炭治郎の刀は炎を纏い、交差する帯を焼き切っていた。
ヒノカミ神楽”灼骨炎陽”
斬られた場所が灼けるように痛んだ。
炭治郎の肩の傷は深い。そんな動きをしたらそこから体が裂けるわよ普通、と鬼は思う。
指先が震える。
恐怖だった。
自分の恐怖なのか、過去の無惨の記憶が呼び覚まされているのかは分からない。
ただ、目の前の少年が恐ろしい。
先程よりも剣戟の速度は速くなっていた。
おかしい、おかしい、痛みを感じないの?人間なの?
炭治郎の刃が鬼の頸に届く。
「あんたなんかにアタシの首が斬れるわけないでしょ…!」
鬼は恐怖に声を震わせながらも、炭治郎に向けて挑発的な言葉を投げかけた。
鬼の頸は、帯のような形に変形していた。
(柔らかいんだ。柔らかすぎて斬れない。しなって斬撃を緩やかにされた。)
一旦後ろに下がると、また帯の攻撃。炭治郎の目は十三本ある帯を正確に捉えていた。
すごく、遅いな。
被害が最小限になるよう、刀で帯を受け流す。
ドン、という音がして、一か所に集められた帯は炭治郎の刀に縫い留められる。
「それで止めたつもり?弾き飛ばしてやる!!」
グン、と引っ張られる感触。帯がピンと張る。
炭治郎は一瞬で間合いを詰めると、十三ある帯を一振りで斬り落とした。
今度は斬れる、そう思った。
お兄ちゃん息をして!お願い!!
死んだはずの2番目の妹が叫んでいる。
ゴホ、という音が自分の口から聞こえた。
体力の限界はとうに超え、炭治郎は酸欠で死にかけていた。
咳が止まらない。目の前が真っ暗で、心臓の音しか聞こえない。
動けない。
その時、ドゴッという鈍い音がして、
鬼の妹―――禰豆子が、炭治郎のことを守るように鬼の前に立ちはだかっていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時