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求めていたもの ページ11

体が弱かった。

生まれつきだ。

走ったことがなく、歩くのでさえ苦しかった。


ある日、無残様が現れるまでは。


「可哀想に、私が救ってあげよう」

両親は、喜ばなかった。

強い体を手に入れた俺が、日の光に当たれず、人を食わねばならないから。

人を食った俺を見て、父は、なんてことしたんだ、累、と言った。

母は、泣いていた。

昔、素晴らしい話を聞いた。
川でおぼれた我が子を助けるために、死んだ親がいたそうだ。

俺は感動した。

なんという親の愛、そして絆。

川で死んだその親は、見事に親の役目を果たしたのだ。


包丁を持った父親が、寝ている俺を刺そうとしていた。

母は泣くばかりで、殺されそうな俺を庇ってもくれない。


とてつもなく苛々して、悲しくて。

父と母を、殺した。


きっと俺たちの絆は偽物だったのだろう。そう思った。

母の言葉を、聞くまでは。

「丈夫な体に産んであげられなくて…ごめんね…」

その言葉を聞いた瞬間、包丁を持った父親が言っていたことを思い出す。

「大丈夫だ累、一緒に死んでやるから」

父は、涙を流していた。

俺が人を殺した罪を共に背負って死のうとしてくれていたのだと、その時唐突に理解した。


本物の絆を、あの日、俺は俺自身の手で切ってしまった。



偽りの家族を作っても、虚しさがやまなかった。

強くなればなるほど、人間の頃の記憶が消えて自分が何をしたいのかわからなくなっていく。


ドサ、と体に衝撃が来る。
地面に倒れたのだろう。


ふと、自分の背中に温かい熱を感じた。

兄が、手を伸ばして俺の背中を撫でていた。


その瞬間、自分は両親に謝りたかったのだということに気付いた。

でも、と思う。

山ほど人を殺した僕は、地獄へ行くだろう。父さんと母さんには、会えないだろう。

ボロボロと、体が崩れていく感覚がした。


背中に、熱を感じる。

懐かしい、ずっと昔、大好きだった手だった。

「一緒に行くよ、地獄でも」

父の声がする。

「父さんと母さんは、累と同じところに行くよ」と、両親は言った。

はっきりと、顔が見えた。優しい、ずっと謝りたかった二人の顔だった。

涙が、頬を伝った。

「全部僕が悪かったよ、ごめんなさい、ごめんなさい…!」

両親は僕をぎゅっと抱きしめる。


ずっと求めていた絆が、そこにはあった。

そんなだから皆に嫌われるんですよ→←助太刀



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設定タグ:鬼滅の刃 , 冨岡義勇   
作品ジャンル:アニメ
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時

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