廿参 ページ25
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「随分と時間が経って仕舞った様だねぇ」
皆が一様に首を項垂れる様に下を向いている中、太宰が其の長い足を組み直して溜息混じりに呟く。
其の台詞と共に壁掛け時計に目を見遣る姿は嫌味な程様になっていた。
太宰の云う通り、ナオミの涙は泣いた証拠で有る赤い跡を残してすっかりと乾いている。
加えて夕餉時はとうに過ぎ、外はどっぷりと日が沈んで星の光が反射してキラキラと室内を明るく照らす。
其れとは対照的に彼等の心は重く沈んでいた。
「そう、ですわね」
そう云った彼女は気まずそうに視線を外す。
「そろそろ迎えに行った方がいいね」
「そうだな。補導時間、と云う訳では無いが
「それじゃあ私が──…」
「其れは危険じゃ無いかい?」
ナオミの言葉を遮る様に与謝野
「確かに外はもう暗いし、此の時間の一人歩きは危ないかもしれない」
「大丈夫ですわ」
「否、でも──」
「大丈夫ですッてば」
与謝野女医に同調するかの様に否定する太宰に反抗するナオミ。
同じ言葉を復唱する様に云い合う二人を見て、人知れず敦は溜息を吐いた。
*
「Aー!Aー!居たら返事をして下さい!」
「おぉーい。A。疾く出て来て呉れ給え。私、お腹が減って仕方が無いのだよ」
結局、折衷案としナオミと、其れと太宰が探しに行く事になった。
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「───…はァ、判ったよ。但し、私も行くよ。良いね?」
か弱い乙女を一人になんてさせられないからね、とウインク片手に微笑む太宰。
ナオミは其れを華麗に
「其れじゃあ行って来ますね」
「───嗚呼そうだ、兄様」
必要最低限の物を身に付け、出掛けようとしたナオミが思い出した様に谷崎の方に静かににじみ寄る。
「私が探しに行っている間ちゃあんと反省、して下さいね。頭をしっかり冷やさないと“夕御飯抜きの刑”ですからね」
目を鋭くし髪の毛をサラリと一つ、撫でる。
其の動作はまるで泣きそうになっている子供をあやす様な優しさを感じるものだった。
「ちゃんと頭を冷やして、其の後に家に帰って久しぶりに三人で一緒に御飯、食べましょうね」
そう云って彼女は笑った。
見る者凡てを魅了する様な笑顔で。
谷崎はふと、泣きそうになった。
理由は勿論、彼以外判る訳が無かった。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時