拾弐 ページ14
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『た、ただいま帰りましたァ』
着いた。やっと着いた。
他の社員の方々が労わる様な視線でお帰り、と返して呉れる。
相変わらず買い物袋を両手にぶら下げ、と云うか最早引き摺っている様なものだけれど。
其れを乱歩さんの執務机にやっとの思いで置いて大きく息を吐く。
早速私と違って元気に満ち溢れている乱歩さんが御土産の物色を始める。
「お帰りA。其れでいてお疲れ様」
『ただいまです。有難う御座います、太宰様』
乱歩さんの机に御土産を置いた後、太宰様に声を掛けられ軽く会話する。
「ねぇ、A!僕が云ってた駄菓子が無いんだけど」
『へ、えェ?ご、御免なさい、乱歩さん』
「まァ、他にも色々有るから別に善いんだけど」
すると急に乱歩さんに声を掛けられ、否、苦情がきたと云った方が正しいだろう。
とは云え、普段あまり話す様な仲では無い私達は皆様から凄く注目を浴びていた。
其方に注目を置いていた私は太宰様が視線を鋭くしていた事に気付かなかった。
「そう云えば前は乱歩さんの事、江戸川様と呼んでいなかったかい?」
乱歩さんに罰として駄菓子を食べさせる様に指示を受けたので其の通りにしようとした時。
乱歩さんの口元に駄菓子を運ぼうとした瞬間、太宰様に声を掛けられる。
「どうして太宰がそんな事訊くのさ」
「否、少し気になっただけですよ」
「ふぅん。気になった、ねぇ」
ニコニコと笑う太宰様を訝しげに見詰める乱歩さん。
『えェ、と乱歩さんが私だけが苗字で呼んでいるのが可笑しいと』
『慥かに可笑しいなと思ったので、名前で呼ばせて頂く事になったンです』
少しずつ声が小さくなっていき、恥ずかしさから頬をかく。
「まぁ、そー云う事だから!残念だったな、太宰」
勝ち誇った笑みで太宰様を見据える乱歩さん。
“残念”と云う言葉の意味が分からなくて首を傾げる。
「流石乱歩さん」
「じゃあA、私の事も名前で呼んで呉れないかい?」
『名前?でも、太宰様は他の皆様からも苗字で呼ばれていませんでしたッけ…?』
そう云ったら太宰様はしまった、と云わんばかりに其の端正な顔を歪めた。
其れと対照的に江戸川様は更に笑みを深くした。
「一回、一回で善いから」
「其れが駄目なら心中しようじゃあないか。丁度先刻の休憩中に良い川を見つけたのだよ」
「其の休憩はお前だけだ太宰。仕事をしろと何時も云っているだろうが!」
国木田様も加わって益々騒がしくなる探偵社で有った。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時