拾壱 ページ13
*
『よ、呼んで欲しい?私なんかが名前で呼んだら不快な気持ちを与えて仕舞うだけだと…』
呼んで欲しいと云う江戸川様の意図が全く読めない。
そう思っていたら急に頬をつねられた。
「何でそうさ、Aってば
意味判んないと云い乍ら頬をふにふにと左右に引っ張る。普通に痛い。
『い、いひゃいです』
「僕が呼んで欲しいって云ってるんだからそうするべきなの!」
そうなのか?
否、慥かに乱歩さんの云う事は絶対と云う処が有るからなァ。
「ほら!離して欲しければ疾く名前で呼んで!」
私は肯定の意を示す様にコクコクと頷く。
「ふふん、其れで良いんだ」
先刻迄不機嫌だったのにも関わらず、直ぐに御機嫌そうに私の頬から手を離した。
『ら、ららら乱歩様…?』
意外と恥ずかしい。
他の人を苗字では無く、名前で呼ぶ事が滅多に無いので何処かこそばゆい。
頬も赤くなっているのだろう。少しだけ熱くなっている。
江戸川様、否、乱歩様の反応が気になった為、ちらりと其方を見上げた。
「そんなんじゃ全っ然駄目!乱歩様って云われると距離を感じるんだけど」
見上げた先の乱歩様は又、先刻と同じ様に頬を膨らませていた。
“様”じゃ駄目なのか。
呼び捨て?そんな勇気は私には無い。
“君”?否、随分と馴れ馴れしい。
“さん”?慥か社員の皆様はこう呼んでいた筈。
其れなら之しか無いだろう。
『乱歩さん…?』
一瞬の沈黙。
然し、私には何時間の様にも感じられた。
「あーはっはっはっは!」
沈黙の後に高らかな乱歩さんの笑い声が響いた。
私はと云うと声に吃驚して肩を竦めていた。
「うんうん!やっぱこうじゃないとね!」
『江戸川様…?』
「戻ってる!」
『は、つい』
もう一度乱歩さん、と呼んでみた。
恥ずかしくて未だ慣れないけれど距離が縮まった様で嬉しい。
「ほら、何してるの。疾く案内してよ!」
『はい!』
そう云って乱歩さんと共に歩き始めた。
見上げた空は雲一つ無い晴天だった。
*
おまけ
「疲れた〜。A背負ってよ」
『うぇ?私は力無いですし、無理ですよ』
「えェ〜使えないなぁ」
何か、一歩進んで三歩位下がった気がする。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時