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第7話 ページ8

「ねえ、紫耀は不思議に思わなかった?」
 静かな声で、勇太は言った。
「俺らって趣味とか、好きなものが一緒で。気が合って、揉めたりしなくて。でも」
 大切に想う存在さえ、同じだった。それは異界に於いては従兄弟だったからなのか。
「話を戻すね。目に特性が現れる魔族は左右どちらか金で、反対側は別の色になる。でも稀に、赤い目が生まれる。魔力は金に比べて弱いけど、自分より低位なら相手の意志を封じて服従させることができる。ただ、子供は制御できなくて暴走する可能性だってある。幸い、鎮静の力の象徴の黒い目を持つ側近がいたらしいんだけど」
 反対車線、通りすぎるライトを見送って。
「黒は人間の血を引く魔族にしか現れない、稀有な能力だからね。様子だけでも知りたいと、【界渡り】の力を転用しようとされた」
「何だよ、その……【界渡り】って」
「異界を渡る力とか、できる存在だね。実は神殿に仕えていた待従が、そのことを知っているって話を聞いて呼び寄せたんだ。でも、叔母上の転用は成功しなくて」
 唇を噛み、悔しげに勇太は言った。
「召喚、してしまったんだ。お前の存在そのものを。でも、神殿の結界は魔族の血を敵と見なして弾いた。近くの森にいた俺達にも伝わるほどの衝撃だった。何があったか。どれくらい、危険なことが起きたのか。起ころうとしてるのかも分からなかったけど」
 ドクリ、心臓が脈打つ。その先を聞いてはいけない気がした。それでも。
「何か、異質なものが紛れたのは子供心にも気付いて。二人で探して見つけてしまったんだ。深手を負って倒れてる、お前を玄樹は」
 不意に、車は脇に逸れた。非常電話の前、僅かなスペースに停車して。運転席の勇太はハンドルに顔を伏せ、続けようとする。
「助けようと、したんだ。でもたぶん……お前は正気じゃなかった。召喚の衝撃と、結界に弾かれたせいだよ。生きるために……でも……玄樹の首筋にあるホクロは、あの時の咬み傷が影響して転化した痕なんだ」
「………っ」
 覚えて、いる。痛みの中、揺らぐ意識が。母親と同じ白い羽根を見た。溺れる苦しさで差し伸べられた腕にしがみついた時、目の前に首筋があって。生まれて始めて、牙を立てた。肌を裂き、広がる血の味……あれが。
「だめっ……」
 けれど、熱を帯びた指が腕を引いて。玄樹が行くな、と見上げていた。

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黒那智(プロフ) - ななみさん» こんばんは、ななみさん♪いつもコメントありがとうございます★完全新作ではなく、いずれ書くつもりだった番外的な続編になります。話数にもよりますが、以前のれんいわカテゴリーに載せる予定なので今少し(いつだよ)お待ちくださいませ。 (2020年10月4日 19時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 新作楽しみです!楽しみがある幸せ^_^黒那智さん、待っております。 (2020年10月4日 16時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - けいこさん» はじめまして、コメントありがとうございます(^_^)まだ書ききれてない部分もあって、ちょっと説明くさいパートが続いてますが、気長にお付き合いいただければ嬉しいです★また遊びに来てくださいね。 (2019年12月8日 3時) (レス) id: bd09ac7e96 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - この不思議なお話好きです。凄く作り込まれていて色々納得! (2019年12月8日 1時) (レス) id: 5ebf2863bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年9月22日 16時

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