第６話 ページ7
数多の異界の中でも人間界への影響が強い、天界と魔界。２つの力は均衡しており、近隣国程度の時差しかないのだと言う。
「でも、時計の進み方がだいぶ遅いみたいで。仮に同じ時期に生まれたとすると、向こうでは小学生程度にしか成長してないんだ。種族寿命が違うせいかもだけど」
高速に乗る頃、話はそんな風に始まった。
「そんな訳だから子供目線での知識になるし、俺と玄樹が生まれたのは天界だから魔界の事情は聞きかじり程度になっちゃうんだけどね」
天界人はその多くが背中に白い羽根を持ち、母なる大地に水を与え緑を育む。その規律秩序を保つ場として神殿があるが、そこには神官と呼ばれる気功の扱いに長け羽根を持たない天界人がいるのだと言う。
「天界では、植物に力を与えるのが本来の用途だけど治癒や武術にも転化できる。これが魔界では魔力に当たるのかな。叔母上から聞いた話からするとね」
と、勇太は僅かに眉をひそめた。
「俺の父親は神官で神殿を治める立場だった。母親も女性では珍しく気功が使える補佐官で、俺には乳母がいた。それが、玄樹の母親だよ」
「え、それじゃお前らって……」
「そう、乳兄弟ってことになるね」
だが、玄樹には羽根があった。両親とも神官の勇太には羽根がなく、成長すれば道を違えるのは子供心にも分かっていた。それでも。
「なるべく長く、一緒にいたかった。叔母上が辛い思いをされたのは、神官長の妹だったからだって。立場上、受け入れなきゃいけないこともあるんだって分かってる……つもりだった」
「なぁ、それって」
「政略結婚、ってやつ。魔界の王に嫁がれたんだ。でも、天界と魔界は対極だから天界人には長く耐えられない。魔族は火と風を魔力の源にしてて、天界だと水中にいるのと変わらない。だから、皇子を産んでほどなく一人天界に戻るしかなかった。お辛かったと思うよ」
「……もう、会えないから余計に……だよな？」
想像するしかない、心情。けれど。
「それでも会いたかったんだよ。何しろ皇子はオッドアイが常の魔族でも異端視される双眼、
まして血溜まりと呼ばれる赤い目だったから」
「……赤い、目？」
まさか、と朝の鏡を思い起こす紫耀に。
「強すぎる力に苦しむのが分かってたからそれを案じるあまり、禁忌は起きてしまったんだ」
その皇子が、誰なのか。口にはしなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒那智(プロフ) - ななみさん» こんばんは、ななみさん♪いつもコメントありがとうございます★完全新作ではなく、いずれ書くつもりだった番外的な続編になります。話数にもよりますが、以前のれんいわカテゴリーに載せる予定なので今少し(いつだよ)お待ちくださいませ。 (2020年10月4日 19時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 新作楽しみです！楽しみがある幸せ^_^黒那智さん、待っております。 (2020年10月4日 16時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - けいこさん» はじめまして、コメントありがとうございます(^_^)まだ書ききれてない部分もあって、ちょっと説明くさいパートが続いてますが、気長にお付き合いいただければ嬉しいです★また遊びに来てくださいね。 (2019年12月8日 3時) (レス) id: bd09ac7e96 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - この不思議なお話好きです。凄く作り込まれていて色々納得！ (2019年12月8日 1時) (レス) id: 5ebf2863bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒那智 | 作成日時：2019年9月22日 16時
