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今から数分前の話をしよう。
俺達はダミーの三級呪霊を祓いながら目標を探していた。敵チームと鉢合わせすることなく、順調に行動していたのだ。真依さんの銃弾が残り二発になった時、異変は起きた。
二匹の化け物に襲撃された俺達は、一瞬のうちに離れ離れになってしまった。
ここらで冒頭を思い出して欲しい、俺は数分前と告げただろう。たった数分、されど数分で恐れていた単独行動が起きてしまったのである。
虎杖の攻撃を上手く躱しながら、真依さんが居るであろう場所へ走る。とにかく走る。
あの双子が戦っている最中に目標が見つかった場合、俺達の負けは確定する。
真依さんの銃弾は残り二発。もしかしたらもう既に撃っていて、俺が銃声を聞いていないだけかもしれない。どんな状況にしろ、何がなんでも真依さんを迎えに行かなければ。
無言で追いかけてくる虎杖を、木々を使って翻弄しながら真依さんを探す。
口から血の味がした頃、ようやく二人を視界に捉えた。
銃を持たずに全速力で木の間を縫う妹、そしてさながら化け物の如く獲物を追いかける姉。真依さんは俺と同様にただ逃げ回るだけの兎と化していた。その姿は字面通り、脱兎である。
「真依さん！！」
濁音混じりで彼女の名を叫ぶ。
四つの眼が一斉に俺を見る。その内の二つに向けて呪具を思い切り投げた。これは当たったかどうかなんて関係なく、ただ隙を作るためだけの行為だ。
空いた両手で鵺を呼び出し、無駄な動作なく、それに乗る。
真依さんに近付き、身を乗り出しながら片手を伸ばした。
風圧のせいでうっかり落ちそうになるが、鍛えた体幹で何度も耐える。真依さんも俺と合流するために駆け寄ってくれている。
流石の虎杖も真希さんも最高速度の鵺には追いつけないようで、このまま速度を保てば撒けるかもしれない。
「手を！ 早く！！」
先より声を荒らげて言った。
それに応えて真依さんが精一杯手を伸ばした。
今度こそ離さない。絶対に繋ぎ止める。
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作者名：しりお | 作成日時：2021年11月27日 20時
