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しばらく無言で歩いていると分かれ道が見えた。右には五条先生が、左には庵先生が待っている。
わざわざ確認するまでもない、俺達は当然左の道を進んだ。誰かが文句を言う声が聞こえたが、きっとストレスによる幻聴だろう。
庵先生から説明書を受け取り、真依さんと二人で確認作業に入る。
要約するとこうだ。目標の呪霊は二級呪霊で、それ以下がダミーの三級呪霊。十分間の試合で、より早く目標を祓除、もしくは敵陣営を全滅させた方の勝利となる。
対呪霊としても、対人間としても、分があるのは明らかに向こうのチームだ。それに肝心の目標が二級呪霊なら、真依さんを一人にはできない。こちらにはできない単独行動があちらのチームでは可能なのだ、これは大きな差である。
「……どうします?」
真依さんは先生に説明書を突き返し、
「俺の後ろに居てくださいって言ったらどうなの?」
と言った。
その口ぶりはまるで私が居るから勝てないと言いたげである。
俺はすぐに返事をすることができなかった。彼女の言う通り、俺はそんな失礼な思考を持っていたからだ。
だがここで、そうですかと適当に返事をすれば、彼女は更に機嫌を損ねるだろう。焦らず、真摯な姿勢で答えるべきだ。
「後ろは頼みました」
また先を歩き始めた真依さんの背中にそう言った。
真依さんは足を止め、数秒静止する。彼女が今どんなことを思っているかは、到底予想がつかない。しかし不愉快な気分にはなっていないはずだ。
俺が歩み寄る前に彼女は行動を起こした。片手を上げ、それを横にひらひらと動かす。そして再び俺と距離を取ってしまった。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時