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空は雲一つない快晴で、朝から清々しい気分になれる。この空の下に居たら悩み事など吹き飛んでいきそうだ。
……そんなわけがない。天気ですらどうしようもできないほどに、俺の心は曇っている。昨日と深夜のせいで精神の平和が崩壊しかけているのだ。
「おはよ!」
快活な挨拶が背後から聞こえてきた。顔を見なくたって分かる、これは虎杖の声だ。虎杖はのそのそと歩く俺の隣に並び、共に集合場所へ向かうつもりらしい。
「ふぁ……、おはよう」
「隈できてるけど、昨日寝れなかった?」
「あぁ、まあ、そうだな」
虎杖の質問に歯切れの悪い答えを出せば、「しんどかったら休めよ」と要らぬ心配を掛けてしまった。
大したことではないと言おうとした時には、既に虎杖は傍に居らず、パンダ先輩に挨拶をしていて、俺は人知れず言葉を呑んだ。また一つ言いかけたことが増えて、俺は煩わしさを募らせていく。
しかし、せめて今日だけはこの黒い感情を無視する必要がある。
理由は二つ。一つめは強化合宿が今日で終わるから。二つめは最後の訓練がペアワークだから。
よって、どうにかこうにか気力の残滓で試練を乗り越えなければならない。今日で全てが終わるのだから耐えきれるはずである。
五条先生の下へ行き、くじを一枚貰う。
持ち得る想像力の全てを発揮して、頭の中に俺を思い浮かべて欲しい。
冷や汗を掻き、浅い呼吸を何度も繰り返しながら、ただの紙片に祈りを籠める俺を。どうにも信じ難い話だが、この頼りない紙に俺の命運がかかっているらしい。
願うのは虎杖、釘崎、真希さん、パンダ先輩、そして狗巻先輩だ。それ以外はお呼びでない。むしろこちらから願い下げだ。
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作者名:しりお | 作成日時:2021年11月27日 20時