高く飛んだその後 (ページ8)

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｢私はこの時間好きだよ。｣

｢……｣

そう言うと、ちらりと飛雄くんの目が私の方に動いた。

｢好きな人と好きなことを話す時間ほど、有意義なものはないですから。｣

だから気にしないで。と笑いかける。
飛雄くんはむっすりと眉間に皺を寄せていたところに、さらに皺を寄せた。これは、照れてる時の顔だ。多分。ここ数年で飛雄くんの表情には大分詳しくなったと思う。

｢わ、｣

その時、ふいに飛雄くんの左手が伸びてきたかと思うと、乱暴に私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
そのまま私の腰に手が周り、ぐいと引き寄せられる。ぴたりと体がくっついて、なんだか高校1年生の時のお正月のことを思い出した。
恥ずかしいし、照れてしまう、けど。私たちももう付き合って数年だ。
そんなぶっきらぼうな飛雄くんの愛情表現が嬉しくて、私はふふ、と漏れる笑顔をそのままに、飛雄くんの肩に頭を預けた。

｢あ、Aちゃんまだ居た。｣

試合映像を見終わった頃、再びリビングに顔を出したのは美羽さんだ。
美羽さんはそのままリビングに繋がるキッチンに向かい、ごそごそと何か作業をし始めた。

｢コーヒー淹れるからさ、お話しようよ。｣

｢はい！お話します！｣

キッチンから聞こえた嬉しいお誘い。
私は嬉々として手伝いに行こうと立ち上がったのだが、｢お客さんは座っててー｣と言われ、しぶしぶテーブルの椅子に腰掛ける。
飛雄くんはこちらを一瞥したものの、会話に加わる気は無いようで、テレビの前に座ったまま新しい試合映像を流し始めた。

｢はい、コーヒーのお供はお土産で買ってきたクッキーね。｣

｢わ、おいしそう。｣

程なくして、いい匂いを漂わせながら美羽さんがコーヒーとお茶菓子を持って私の向かい側の椅子に腰掛けた。
美羽さんはたまにこうして私と話す時間を作ってくれる。｢未来の妹なんだから｣と冗談っぽく笑いながら言ってくれて、たくさん可愛がってくれた。その様子からは私への気遣いやプレッシャーにならないような雰囲気も感じとれて、本当にいい人だと改めて思う。

｢そうそう！見たよAちゃんのウェアモデル！かわいかったわー。｣

｢えへへ、ありがとうございます。
実は結構皆さんに褒めてもらってます。｣

｢でしょ！ただ、私ならAちゃんをもっと可愛くメイクできた自信があるのよね。それだけが悔やまれるぅ……！｣