恋はやがて泡になる。【灰谷蘭】 (ページ17)

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17.落ちたページ17

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「ゆっくりしていってね。」

秋吉の義母は、柔らかい物腰で優しい雰囲気を纏っていた。

どことなく秋吉と似ている。

家の中は、言わずもがな広い。

綺麗に揃えられたお菓子に、温かい紅茶。

秋吉の自室ももちろん広く、可愛らしい家具が揃えられていた。

俺が想像した秋吉の部屋そのものだ。

虐待の”ぎ”の字も浮かばない。

『蘭くん、どうぞお菓子食べてください』

蘭「おう、いただきます。」

色んな女の部屋に上がったが、これほどまでに綺麗でお洒落な部屋は初めて入る。

『どうぞ、この紅茶も。』

蘭「いや、それはお前の分じゃん」

『…私、実は紅茶が得意じゃなくて』

情けなく苦笑いする秋吉は、どこか申し訳なささが滲んでいる。

気遣いでもてなしてくれている義母に「苦手」だと言い出せなかったのか。

…自分の家ですら、こうやって気を遣ってるんだな。

蘭「じゃ、もらうわ。」

『蘭くんは紅茶好きですか？」

蘭「割と好き。コンビニ行ったらストレートティー絶対買う。」

『そんなに好きだったんですね！』

蘭「逆に秋吉は何が好きなの？」

『ミルクティー！ティーは嫌いだけど、ミルク入れたら飲めます！』

蘭「フーン、変なの」

『はは、変ですかね』

それから俺は、秋吉の好きな食べ物、好きな季節、とにかく思い浮かぶ色んな質問を秋吉にした。

知りたいと思ったんだ。秋吉Aという女の子を。

蘭「次は…猫派？犬派？」

『ちょ、ちょっと待ってください」

蘭「何だよ早く答えろよ」

『あの、この質問攻め何ですか？』

蘭「文句ある？」

『いや文句とかでは…」

蘭「いいから黙って答えてろ～。」

『えと…猫派です。』

もう十分に手遅れで、結果は見えているけど

それでも俺は今の俺に戸惑い続けている。

秋吉と出会ってどのくらい経ったんだろう。

さすがに俺も馬鹿でもなければ鈍感でもない。

探していた答えをやっと見つけられた。

蘭「最後、秋吉の好きな奴って誰？」

真っすぐコチラを射抜く瞳。

『…秘密です』

”多分”とかいう言葉で誤魔化したりはしない。

オレは

蘭「それってさ、俺だったりすんの？」

秋吉Aという女の子に惚れている。