01.あの頃 ページ1
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春千夜「…はつこい?」
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隣の三途からそんな言葉が聞こえ、俺は思わず耳を傾けた。
九井「人生で一度は経験するだろ?」
春千夜「…知らね。」
九井「まぁ三途には期待してない。灰谷はどうなんだよ?」
隣で恋話に盛り上がるオッサン共。
お前ら何歳だよ。反社会勢力が集ってする話かコレ?
竜胆「俺は覚えてるぞ。兄貴の初恋」
九井「…蘭の、初恋?」
春千夜「コイツが恋??セ フレの間違いだろぉ?」
竜胆「いいや。アレは間違いなく恋してた。だよな兄貴?」
蘭「ぺらぺら喋んじゃねーよ。」
鶴蝶「は…マジ?」
ついに話に興味の無さそうだった鶴蝶まで口をはさむ。
そんなに意外か?たかが恋だろ。
…あーまぁ、一番戸惑っていたのは当時の自分か。
九井「好きだったのか?その子のことが」
蘭「何、この話続ける?」
鶴蝶「ちなみにいつの話だそれ?」
蘭「いつだっけか……まだ俺が高校生んときだったな。」
春千夜「お前ら高校行ってたんだな。まずそこに驚きだわ」
九井「黙れ三途。高校って、バリバリ現役だった頃じゃね?結局その子と付き合ったのか?」
竜胆「…そういや、どうだったっけ。」
暗い部屋で、ふいに思い返してみる。
確かなことはもうあまり覚えていないけれど
アイツと過ごした日々だけが俺の人生の中で未だに色づき続けている。
あの一瞬にしか、アイツはいやしない。
こんな俺でも、こんな世界がそれでも楽園であることを
アイツの深呼吸で知った。
蘭「あれが青春だった。なんて言えるくらいには俺も歳を食っちまったってことだな。」
らしくないな。
あの頃の俺は、今よりずっと恋をしていた。
泣いた、笑った、名も無き日々。
ため息を知らない自分があの頃には居たんだ。
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作者名:平 | 作成日時:2021年11月24日 14時