10 『人間の最高の幸福』 ページ10
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誰かが言った。
「人間の最高の幸福とはなにか？ ──幸せに死ぬことだ」
──そうかもしれない。
幸せなまま死んでいたら、この不幸を受けずに済んだのかもしれない。
小さな不幸を大きな不幸だと謳い、幸福のまどろみに沈んでいた方が良かったのかもしれない。
少女はそんなことを考えた。目の前の光景を理解するより前に、そう思った。目が離せないのに、もう視覚の情報はとっくに脳に届いているのに、脳がそれを処理してくれない。
ただ、血生臭い空気を吸って、また吐いただけだ。
「ぁ、ぁあ……！ なん、何で！ どうして！ どうして、どうして、こんなことに……！！」
隣で少年が崩れ落ちた。ぁあ、ああ、と呻き声を上げ、嗚咽しながら俯いた。
──誰も彼もが死んでいた。
少年を気持ち悪いと罵った強気な悪童も。それを見て見ぬふりをしていた弱気な女の子も。寺子屋に通っていた、今日此処に来ていた子供達が。一人残らず。
死んでいた。
かつて、「一つだけだ」と言って、高価なお菓子をくれた男性。少年の外見を絶対に罵らなかった男性。ふたりにただ一人だけ、『愛情』を注いでくれた男性。
彼も死んでいた。
少女は崩れ落ちて動かなくなった少年を置いて、未だ血が滴る寺子屋の中へと入る。時刻はもう少しで夜明けだが、全く陽が入ってこないので暗い。
少女が眼前の光景に思わずこみあげて来たものを、何とかそのまま押し戻す。そして、何人かの子供を庇うように倒れている男性に近づいた。震える手で、男性の喉元に触れる。
──温かい、何か動いてる、脈がある！ 生きてる！！
少年に自分が得た情報を伝えようとした瞬間、少女の鼓膜を誰かの声が揺らした。
「逃げ……、ろ………………！！」
──。
男性の声だ。最期の力を振り絞り、少女にそれを伝えたのだ。
少女の中で様々な情報が合致する。庇うように倒れていた男性。まだ温かい子供の死体。視界の隅で動いた人間大のなにか。つまり、まだ、襲撃者は。
此処に居る。
「──────ぁ！！」
少女はもう何もかもをかなぐり捨てて、ただ、少年に近づく為だけの一歩を踏み出した。
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byアンティスネスさんです。少女ちゃんがこれ知ってる訳ねぇだろという突っ込みは受付ませんぜ。
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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……！皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります！！ (2020年4月15日 17時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました！すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください！ (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか？ (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2020年3月28日 16時
