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33 『誰が為彼が為』 ページ33

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「──」



 石があった。それは墓石で、墓標であった。名前の無い墓標だ。



「名を刻みたかったが、彼の名前を知っている者が居なくてな。……君は知っているか?」

「…………。いいや。俺とあいつに、名前はねえよ」



 煉獄の問いに、少女は首を振ってこたえた。その言葉に、痛々しそうに胡蝶姉妹が顔を歪める。榊原はケッと吐き捨てた。

 少女は煉獄の肩を借りながら此処まで歩いてきたが、煉獄から離れて一人で足を踏み出した。地面をしっかりと踏みしめ、その墓標に近づいた。



「──ぅ」



 一瞬だけ、微かに漏れた嗚咽。


 少女は膝から崩れ落ちて、地面に俯く。震える指が、地面を引っ掻いた。そのまま手を強く握り締める。



「────ごめん」



 ただの石に縋りついた。ただの石に顔を押し付けた。ただの石に、

 大好きな子の墓石に、謝った。


 石を抱き締めて、ただ涙を流し続ける少女を見ていた三人。見ていたのは三人である。つまり、見ていないひとりは、



「よ」

「ぉかッ……!?」



 首に手刀を落とされ、少女の意識が一瞬にして混濁した。かは、と空気が漏れる音がして狼狽の表情に染まり、そのまま気絶した。

 少女を気絶させた張本人、榊原はぐったりとした少女をべりべりと石から引き剥がした。




「……いや、何してるんですか!?」




 しのぶが叫んだ。グッジョブ(意訳)、カナエと煉獄は心の中で親指を立てた。


 榊原はしのぶの問いには答えず、少女の歳の割に軽過ぎる体を片腕だけでしのぶに放り投げた。少女の体重が軽いとはいえ、流石柱といった筋力である。

 しのぶは突如放り投げられた少女の体に、「わ、ぁ!?」と戸惑いの声を上げながら何とかキャッチ。少女の怪我の具合を視覚だけで捉え、思わず「──ひどい」と顔を顰めた。



「こんなに傷口が開いてるのに、本当によく此処まで……」


「オレァ決めた。そいつをオレの継子にする」



 ……、うん、あの。





 ごめんもっかい言って??





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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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