26 『逃走の目撃者』 ページ26
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「取り敢えず……」
少女は己の体を見つめた。見知らぬ服に着替えさせられている。薄い黄緑のような色をした洋服だ。右腕には
一体誰がやってくれたのか知らねえが、すげえ動かしにくいな。少女はそんなことを思ったが、右腕をぶんぶんと振り回したら地獄の苦痛を味わうことになったので考え直した。もとい反省した。
体の何処もかしこも、包帯やら
──。
──こんなこと、してくれなくて善かったのに。
「……。痛てえ」
じんじんと疼く右肩。噛み千切られそうになった。その痛みはもう二度と味わいたくないと思う程だった。だけど少女は、
誰かが歩いている音が聞こえた。
少女は反射的に身を固くした。それは廊下から響いてきており、確実に此方へと向かっている。このままでは鉢合わせする。
逃げる意味は無いが、わざわざそいつと面会する必要性も無い。少女は逃げ出すことを選択した。閉じていた窓を開き、窓枠に足をかけて外へと飛び出す。
庭があった。広い庭だ。
木々が生え、傍らによく手入れされている草花が見える。
少女は今まで自分が居た屋敷をぐるりと囲むようにある木を重ねた壁を見つめた。それから周りの木々を見渡す。
「──よっ、と」
膝を軽くたわめ、跳ねる。低い木の枝に左手だけで全体重を支え、それから猿のようにゆらゆらと体を揺らし、重心を移動させて違う枝に飛び移る。左腕に負荷が大量にかかるものの、少女の身体能力を鑑みれば余裕の芸当だった。
少女はそれを繰り返し、壁の上にぴょんっと降り立つ。
周囲を俯瞰して、屋敷をちらと振り返り、また壁を蹴って、屋敷の外へ跳んだ。
「……なにあれ、」
それを見ていたこの屋敷の主人の妹である、髪に蝶のような髪飾りを付けていた少女は、「姉さんに報告しなきゃ……!」と慌てた様子で屋敷の中を駆けて行った。
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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年3月28日 16時