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18 『約束、守れない』 ページ18

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「──づぁ!」



 ズザァッと、少女の矮躯が地面に転がった。ぁぐ、うう、と呻く。鬼の爪が掻き切った右腕を庇うが、痛みは休む暇もなく押し寄せる。

 右腕集中砲火じゃねーか、これ治んのかよと少女は悪態を心の中で吐いた。


 鬼は無様に痛みに耐える少女を見下ろし、醜悪な笑みを浮かべ、そのか細く白い首を叩き折らんと、少女の血と他の誰かの血で塗れた爪を振りかざした。

 ぽろりと、少女の瞳から涙が零れる。後悔の涙だった。






 ──ごめんなぁ、ごめんなあ。約束、守れねえな。だけど、俺、お前だけには生きてて欲しいから。辛いだろうけど、頑張ってくれ。

 ──頑張って、生きてくれ。






「……ごめん……!」



 鬼は少女の想いを、硝子でも踏むように、その手を振り下ろした。

 少女のか弱き首がぼきりと折れ、鬼は少年を探しに行き、彼すらもを手にかけ──



「──ぐあァ!?」

「──」



 ──ることなどは無く、純然たる事実として、鬼の片腕が飛んだ。刀で斬られたのだ。

 慌てて断面を押さえ、血潮をまき散らしながら飛び退る鬼。少女は戸惑いを表情に浮かべ、ただただ困惑した。


 鬼を斬った人物は、燃えるような橙と紅蓮の髪色をしていた。余りに特徴的な髪、加えて大きな瞳。それは後方に飛んだ鬼を睨みつけたが、すぐにちらりと少女の方に目をやった。



「大丈夫か、少女」

「だいじょ、大丈夫ですかっ!? 血、血がたくさん……! 痛いですよね、どう、どうしましょう、」



 少女が人物の──煉獄の登場にまだ驚いている時、ぐわんという衝撃が少女を襲う。「な、おま、何で」と言う少女に、少年はわんわんと泣きながら抱き締めた。ひたすらに謝罪し、良かったと叫ぶ。


 少女は若干パニック状態だったが、少年の荒ぶりようを見て一周回って落ち着く。



「あの、あ、あんたは」



 未だ喚いている少年を庇うようにしながら、少女は煉獄に問いかけた。少しの敵意も混じっていて、煉獄は仲が良いのだな、と微笑を浮かべた。

 だがすぐに表情を消し、鬼と相対しながら視線を寄越さずに二度目の名を告げる。



「俺の名は煉獄杏寿郎。鬼殺隊だ。そこの鬼を斬る為に来た」

「お……、鬼?」


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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/  
作成日時:2020年3月28日 16時

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