13 『満身創痍』 ページ13
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「……ん? いや、お前──女か」
化物はそう言い、少女の反応を見て、下卑た嘲笑を浮かべた。少女を食料と認めたのだ。そんなことで少女も認められたくはないが。
少女は既に立ち上がっていた。膝は笑い、右腕はだらりと力なく垂れさがっている。一目で重症だと判る。
ただし、その漆黒の瞳は、闘志に燃えていた。
少年は辺りに見当たらない。どうやら逃げてくれたようだ、と霞みがかった脳で思考した。
少女は近くの棒切れを広い、構える。先程感じた膂力だと、多分一発で折れるだろう。むしろ一発もってくれたら良いんだが、希みは薄いだろう。
恐らく、負ける。一矢報いるくらいのことはできそうだが、どうやらあの化物は生物の
ただ、できれば。
自分が生き残り、少年と再会でき、男性も救える。そんな未来を。
──ひたすらに、
「──だぁぁああああああ!!」
「へっ」
直線上で突っ込んで来た少女を鼻で笑いながら、化物はいとも容易く避けた。決死の突撃だったろうに、ご苦労なこった、と化物は嘲笑う。
化物は、人間より数倍良い五感を持ち合わせている。その反射神経で、少女を避けすれ違いざまに爪で傷付けるつもりだった。
が、爪は、空気を切った。
──な。
化物は少女を見失った、あり得ないことだ。そんな高速で少女が動けるはずはない。だが現に少女は化物の視界に無く──、否。
少女は、屈んでいた。
化物に爪を振るわれる直前に、体を倒れる程に前傾姿勢にしたのだ。寝そべるような体勢で爪を掻い潜った少女は、そのまま直線で走る。
化物は爪を振るったことにより次の行動へは動くことができない。少女が此処で何かしらの行動を起こしていれば、自分に何か傷が入ったかもしれない。
そして、後ろを振り向く。
──少女の姿が、またも見えない。
今度こそ驚愕に顔を染めた化物は、上を見上げた。
憤怒を堪え、歯を食いしばった少女が。
化物の無防備な脳天に、棒切れを直撃させた。
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満身創痍な状態で鬼と相対して二割は自分が生き残る未来を想定できる少女ちゃん凄すぎる。
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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……!皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります!! (2020年4月15日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました!すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください! (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか? (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年3月28日 16時