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松の動きがあからさまに止まる。
「ほんとだ!日向の簪、気に入らなかった?」
悲しげに形のいい眉をひそめた日向に顔を覗き込まれた彼女は、フッと横を向く。
「長旅だったし、用事が用事だったから着けてなかったの。でも日向から貰った大事なお守りだから、ちゃんと持って行ったわよ」
「えへへ、よかった!」
大事なお守り、という言葉に気を良くした日向は追求することなく、空いている松の手を握った。
あの簪の件を知っている勲、退、総悟を含めた一番隊の隊員達の表情が強張る。
「そうか、どっかで落として無くなったのかと思ったが、心配はねェみたいだな。」
懐から煙草を取り出した十四郎が言うと、日向はカラカラと笑った。
「松さんに限って無くし物なんてするわけないじゃん!江戸で一番のしっかり者なんだから」
じゃあね!と、元気に門へ向かう日向は、そこから動かない松によって引き戻される。
「松さん?」
再び、彼女の顔を覗き込んだ日向に、松は今度は笑顔を向けた。
「先に門で待ってちょうだい。帰りに日向の好きなものを買って帰りましょう。何がいいか、考えておいて」
するりと解かれた手を残念そうに見つめた日向は、はーい。と聞き分けよく、門の方へ歩き出す。
日向が、確実に声の届かない門の外に出たことを確認した松は、十四郎を振り返った。
その表情はいつもの穏やかな松ではない。
「あんた、やっぱり只者じゃねェな」
並々ならぬ憎悪を宿したその瞳は、退が息を呑む程だ。
「あの子に手を出したら許さんけぇ、覚悟しなさんせ。」
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いぬ(プロフ) - 大好きです!いや、もう本当に好きです。日向ちゃんの性格が可愛すぎるっ!これからも頑張って下さい! (2020年12月17日 6時) (レス) id: daed22b7fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉良 x他1人 | 作成日時:2015年1月9日 18時