食事へ．２（その後２） ページ35
週末の店内は人も多い
そして席ではなく、奥のショーケースに進む。
「ここ、スイーツも食べれるから」
「わぁ！美味しそう！」
ショーケースの中を覗くAの表情に笑顔が戻る。
「やっといつものAだ」
ホッとした俺に少し恥ずかそうにするのが
たまらなく可愛い。
「スミマセン……」
「謝るのは俺の方。でもとりあえず
甘いものでも食べましょうか？」
「はい」
ショーケースのケーキを
ジーっと見つめるAを眺める。
「決まった？」
「うーん。まだ悩んでます」
「どれ？」
「コレとコレです」
「じゃあ、それにしよう」
「いや、さすがに二つは無理です」
「俺のもってこと。
……すみません」
店員さんにケーキをお願いして
席に案内される。
週末の店内は人も多くて
奥のカウンターのソファ席に案内された。
二人がけのゆったりとしたソファだったけど
肩を並べて座るのは、
なんだか力が入ってしまった。
こんなに緊張するのはいつ以来だろう？
仕事も年数を積めば、緊張する機会も減った。
コーヒーと紅茶もお願いして
うーーーーん。
自分からあんなこと言いだしたんだけど
何を話すべきなのか。
Aなんてもっとそんな感じだろうな。
元々気ィ遣うヤツだし。
「さっきは突然、ゴメンな？」
もうなかったことにはできないし
全く別の話をして
上手い具合に持っていける気もしないし
とりあえず、で
「……いえ、はい。
大丈夫、です？」
「ほんとに？」
動揺させてしまったのは俺だけど
あまりに動揺しているAに、思わず笑ってしまった。
だって、Aがここまで動揺してるのを初めて見た。
「いや、マジでごめん。
……本当はまだ
こんなこと言う予定じゃなかったのよ」
今さらカッコつけようもないから
もう正直に。
「じゃあ、なんで？」
「Aが別のやつと付き合ったらどうしようって思ったら
いても経ってもいられなくなりました」
「黒尾さん以外にこんなこと言ってくれる人
いないですよ」
「今まではね？Aずっと彼氏いたでしょ？
だからたぶんそういう話がなかったんだと思うよ。
だけど、別れたら。わかんないでしょ。
現に俺はずっとAのことが好きだったんだし」
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作者名：しの | 作成日時：2020年8月19日 0時
