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低音の声援のような声で眼が覚めた。男の声だ……とすぐわかる。
そして、真っ暗な密室に閉じ込められているという状況で不安が煽られる。
「では、今回の商品は______踊り子人形、ドール！」
その言葉が聞こえたと思ったら、密室から逃げ出すことができた。
キョロキョロとそこを見回していると、首に鎖のようなものが付いているのに気付いた。
その鎖が首にまとわりつき、気持ち悪い。
首が締まるような痛みを感じる。
痛みに顔を歪めているとズルズルと引きずられていく。
鎖の先にはステージのようなものがある。
「痛いっ……痛い！」
足を床に殴りつけて抵抗する。そんな姿を嘲笑うかのように、鎖を引っ張られる。
引っ張られていると、ステージのような場所に着いた。
そこには黒のスーツ姿の人たちがワインのような物を片手に、こちらを見てヒソヒソと喋っている。
「自分で育てられる可愛い人形のドール、今なら食べごろです」
司会のような人がドールドールと連呼している。自分の名前のはずなのに自分の名前のことを指していない。
競うように数字を増やしている観客のような人達を見ると、
これは僕を売ろうとしているのだと理解した。
観客達は血の気が引いた真っ青な僕の表情を見ているはずなのに、無情にも数字を口にするだけで、助けてはくれない。
この空間の異常さがわからないの？
そう頭に浮かんだ時、場違いな一人の青年が桁違いな数字を口にした。
「１００万ドル」
100万ドルとは日本円にすると１億ぐらいになるはず。
周りにはその上の金額を出すものはいない。
むしろ「こんな人形なんかで頭がおかしいのか」と心配されている。
司会のような人は僕の首に取り付けられている鎖を外す。
『おら、行け。お前の主人だ』
前と同じ、頭の中に声が響くように聞こえる。
同時に体が動き、この異常な空間とは場違いな青年の元へ行く。
青年のもとに着くと、青年は優しく僕の頭を撫でた。
「うちに帰ろうか」
そう言い僕に自分が着ているコートを掛けてくれた。
今気付いたけど。僕は謎に着飾られていて、女装のようになっていた。
それを気遣ってコートを掛けてくれたなら、良い人なのかな。
そんなことを思いながら、青年の背中を追いかける。
______小走りして彼の元へ向かう僕の背中を、哀れそうに見つめている人がいるなんて知らず
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