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部屋に戻り椅子に腰を掛ける。
すると窓の方から僕の気をひくようにカツカツと音が鳴る。
カーテンを開けて窓を見ると黒毛の猫がいた。
中に入れて欲しそうに窓を引っ掻く。
窓を開けると冷たい風が入ってくると同時に、クロが寒さから逃げるように僕の部屋に入った。
「……クロ?」
僕の部屋に入った途端、
先ほどまで凛とした態度だったクロが扉に向かって威嚇している。
そんな事をされると扉の外側に何かいるのかと思って、怖くなってくるじゃないか。
クロは窓際に行って僕になにかを伝えようとしているのか窓を叩く。
僕には全く伝わって来ない。
首を傾げて唸っていると扉をノックする音が聞こえた。
「A、ちょっといいか。」
扉を開けると蓮が立っていた。
蓮はいつもの素っ気ない表情ではなく、少し焦り気味に口ごもっている。
「優……呼んでた」
口を開いたと思ったら優の話だったらしい。
なんでそんな事に口ごもっていたのかよくわからないけど、蓮は下を向いてしまった。
優のところに行こうかと、部屋から出ると蓮に腕を掴まれた。
「……怒ってたから気を付けろよ」
なんで泣きそうになっているのだろうか。
しかも“行かないで”と言っているかのように腕を強く掴む。
「ありがとうございます」
蓮の言動が理解できなかったせいで、なぜかそう言ってしまった。
蓮はさっきと変わらず俯いて、僕の腕を離した。
腕が外れたのを確認して、憂鬱な感情を持ちながら優の部屋へと向かう。
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