36/微熱かどうかは人による ページ36
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【A視点】
「38℃……風邪ですね」
言って、布団をかけ直してやる松陽。
いつも澄まし顔の高杉が今は頬を真っ赤にして苦しそうに目を閉じて眉間に深い溝を作るほどだ。
私は風邪をひいたことがない。
だからその辛さは理解出来ない。
でも、でも、こんな、こんなことって……、
「あんまりだー!!」
「A、声が大きい」
「あいてっ」
松陽にペシっと叩かれた。
「何でこいつが風邪ひくんだよ……」
別室で銀と戯れに行ったヅラならまだ分かる。
あんな激流に数分揉まれて、あれだけ憔悴したあいつならまだわかる。風邪ひいたって仕方ない。むしろ自然だ。
でもあいつピンピンしてるし?
私もピンピンしてるし?
水に濡れた私達が元気なのに何で水に一切濡れなかった
「お前アレだろ高杉、普段はクールで隙のないキャラやってるけどたまに弱味を見せることによりギャップ萌えを狙いファンを獲得しようって算段だろ。ハッ、そんな安い手にのるのは毛も生えてないガキくらいだぜ」
「……おまえ、自分のこと言ってんだろ、それ」
高杉はうっすらと目を開き、掠れた声でそんな事を言いやがった。
「自虐ネタはほどほどにな……」
「誰が毛も生えてないガキだゴラァ!! 言っとくけど生えてるところは生えてるからね!! これホントだからマジで! 何なら今ここで見せてや」
「やめなさい」
ゴンッ。
割と強めのゲンコツが頭に入った。
埋まるほどではなかったが、その威力に膝から崩れ落ち高杉の腹の上に倒れ込む。布団がふわふわで気持ちがいい。
あ、このまま寝たい。
「先生……、俺のことは構わず祭り行ってくれよ」
ふと、唐突にそんな事を言う。
さっき私達が話してたの聞いてたのか。
「ですが、君を一人残しては」
「構わねェよ……、寝てるだけだ」
「寂しくなっちゃいませんか」
「……。ならねェよ」
強情に顔が隠れるまで布団を被り、松陽と目を合わせないようにする高杉。
いつもとは違う掠れた声は頼りなく、そして覇気がない。まるで高杉ではないようだった。寂しくならないかと問われた時の顔といい、
「松陽」
「はい?」
「ゲホッゴホッ」
「………」
「私も風邪ひいちゃった」
真顔で言うと松陽は黙り込み、高杉はギョッと布団から赤い顔を丸出しに私を凝視してきた。
やがて、松陽はふっと笑った。
「それは大変。晋助と一緒に安静にして貰わなくては」
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佑依佳 - すごく良かったです。パスワードを教えてくれませんか (4月15日 10時) (レス) id: 4b4e019a12 (このIDを非表示/違反報告)
LIARPIERROT(プロフ) - こちらの作品のパスワードは作者様が作者ページに掲載してらっしゃいます。確認してからコメントしましょう。 (12月21日 20時) (レス) id: 7068d0a9b2 (このIDを非表示/違反報告)
茜 - 初めて読みました。とても感動して続きを読みたいと思いました。なので続きを読ましていただきたくパスワードを教えてくれないでしょうか?これからも頑張ってください!! (11月19日 15時) (レス) id: fd0a1b2f31 (このIDを非表示/違反報告)
菖蒲 - 続きを読みたいのですが、パスワードを教えてくれませんか? (10月20日 12時) (レス) id: de6a447dfa (このIDを非表示/違反報告)
白虎 - 続きを読みたいのですが、パスワード教えてくれませんか? (8月16日 23時) (レス) @page3 id: ec81a6d504 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:糸針 | 作成日時:2018年9月21日 23時