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病気に掛かったことも本当だ。
学校に行けなくなったのも本当だ。
ただ、病気というものが身体的ではなく精神的なもの。学校に行けなくなったというのが、入院とかの理由ではなく登校拒否と言うだけのもの。
『今も月二回は通院しなければなりませんが、普通の生活に戻っています』
これも、本当のこと。月に二回、心療内科で薬を貰っている。
相手方の反応から情報の取り違いがあり、何となくすれ違いがあるのは分かっていたが、それを訂正することはしなかった。
「聞かれなかった」から「言わなかった」だけ。もし後々このことがバレたとして、故意だと言い切るのは難しいだろうし、Aの否は証明がし難い。
そういう逃げ道をつくった。
「そう…話してくれてありがとう。これで面接は終了です」
最後の質問が終わり、面接の終了を目を細めて笑う伊沢から伝えられた。
『ありがとうございました』
Aも軽く微笑みながら、頭を下げる。
「以上となります。採用、不採用は一週間程度でこちらからメールを送らせていただきますので」
『はい、改めて貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました!…失礼致します!』
実際のAとは正反対で、ハキハキとした口調で明るい印象を与える努力をした後、彼らを残してカメラと通話を切り、Aはひと息をついた。
どうにかこうにか面接自体はやり遂げたと思う。最低限の嘘で済ました面接に不自然なとこは多分なかったはずだ。
でも、ひとつ気がかりなことがあった。
Aが過去のことを話している時にひとりだけ、ずっと難しい顔をしているQuizKnockのメンバーの河村のこと。
普通なら伊沢のように病気が治ってるとAが言えば「よかったね」と笑ってくれるだろうところ、こちらを射抜く視線の鋭さと固いままの雰囲気に。
何かを見透かされているようで…。
疑われているようで…。
知られているようで…。
彼の視線だけがざわざわと胸を落ち着かせなかった。
『…あの人、嫌だな……』
耳に付けていたイヤホンを外して、指先にイヤホンのコードを絡めながら、初期設定のままのパソコンの画面にポツリと呟いた。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時