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「…暑い」
とにかく暑い。夏は暑いということは日本人としてわかってる。しかしながら呟かずには居られほど不快指数が高く仕方なかった。
玄関の扉を開けてすぐに、一旦クーラーの効いた部屋に引き返そうと外出に疑問を持つほど今日も今日とて暑い。
容赦なく上から攻めてくる太陽の日差し。アスファルトから立ち上る蜃気楼が暑さを可視化しているようで。
この前まで寒かったのに、と愚痴りたくもなる。寒くても体調を崩しやすい河村だが、ここまで暑ければそれもそれで体調に影響を受ける。
河村は付き合ってきた自分の病気と自分の精神面とは今のところそこそこな関係。20代前半では気づけなかった限界のラインみたいなものにやっと気づくようになってきた。
新チャンネルの設立、今年も詰まってる生放送の予定。忙しくなって何もかも面倒くさいと感じる前に予約を取った定期検診。
まぁ、忙しいターンでなくても病院に行くのは面倒なのだが手遅れになる前に…。
通院している精神科の平日の午前の診察は混雑してなくて、現在のところ待合室には一人だけ。服装から若い女性だと推測される。その人はスマホを覗き込んでいた。
河村が受付に診察券を渡したあと、40代くらいの男性と腰が曲がった女性の御老人が杖を付いて病院に入ってきたところで河村も自分のスマホに目を落とした。
しばらくして。
「河村さん、診察室1へどうぞ」
河村の名前が呼ばれた。企画や作問のネタを考えていたスマホをカバンにしまい立ち上がる。
すると受付で財布を取り出している女性と河村の目が合った。
「あ」
河村の口から短い声が上がる。
マスクをしていて、いつもよりヘヤースタイルもナチュラルだが、河村の知り合いの彼女…AAに間違いがなかった。
あちらも河村を認知したようで目に驚きと焦りが見て取れた。
診察券と処方箋を受け取っているだけでは付き添いという線もあるが、気まずそうに目線を下げるAからはそういう雰囲気は感じられなかった。
焦りが隠しきれない目は若干目が赤く潤んでいるようにも見える。
河村は精神科の通院に自分の中で受容も出来ているがそれは一種の考え方であって、全員が全員そうでないし、受け入れ難い人もいるかもしれない。
河村がAに一言掛けて通り過ぎようとしたとき…
ヒュ、という強い呼吸の…ドキッとする音が耳に飛び込んできた。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時