第三部 順応 ページ19
Aが視聴者に、自分を認めさせる為には分かりやすく力を見せつけるしかなかった。
異質な題材。
尋常ではない投稿頻度。
惹き込まれる文筆の才。
それは時間をそれ程掛けることなく実り、視聴者はもちろんQuizKnockの内部からも一目置かれ、記事の採用率は異様な高さを誇っている。
普通なら胸を張って誇ってもいいその飛び抜けた才能。Aも自分自身、文章を書くのは得意ではあるし自信もある。
しかしながら、その文章力を発揮することは正直諸刃の剣だと考えていた。
なぜなら、バイトとはいえ働いている以上人間の感情がそこに絡んでくる。
Aと一緒に選ばれたライターもだが、それよりもAより先に入社しているライターからしてみれば面白くないところもあるだろう。
このままでいくと間違いなく確実にAは妬みを買ってしまう。
いくらQuizKnockという会社がクリーンであり、集まってくる人達がいくら優秀でも、人間とは…世界とは…社会とは…そういうもの。
職務の範囲の「新人ライターのくせに」という批判はまだいい。
A個人の「高校に行ってないくせに」もまぁなんとか飲み込める。
ただ最終的に「ブサイクのくせに」という全然関係ないところまで叩かれる羽目になるのが目に見えている。
もう二度とあの頃の自分には戻りたくない。
『すみません、お時間いいですか…?また…文字が入らなくなってしまって…』
Aはエンターキーを何度も叩いたが、進んで行かない文字カーソルに、あれ?と疑問の声を小さくあげて首を傾げていたが自分に早々に見切りをつけて隣で記事を書いていた先輩ライターに恥ずかしそうに声を掛けた。
すると、先輩ライターは苦笑いで自分の席から立ち上がってAの後ろからマウスを取りパソコンを覗き込む。
本日だけでAがパソコンの不調を訴えたのは三回目。
『すみません、毎度毎度何回も…』
今日三回ともお世話になった先輩ライターに何度も頭を下げ、Aは謝罪を口にした。
すぐに直ったことを告げられ驚きお礼をいうAは珍しいものではなくて、Aが極度の機械オンチでパソコンとの相性がすこぶる悪いことはQuizKnock内でどんどん広まり。
「Aさん、今日は一回も異常なく終業時間を迎えれたね!」
『…いや、いつもは私が悪いんじゃなくてパソコンの調子が…』
なんて弄られ、笑いになるくらいだった。
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わらべ(プロフ) - 和奏さん» とても返信遅くなりましたがコメントありがとうございます!夢主のこと好きって言って貰えてこれ以上ないくらい幸せです!ひとくせある子が好きなので今回の夢主も気に入っていただけると嬉しいです!また読みに来てくださいませ! (2022年1月23日 20時) (レス) id: de37784df7 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - わらべさんのお話はどれも夢主ちゃんのことが大好きになるので不思議です…更新のたび覆されてワクワクするし最高です〜!これからも応援してます。 (2021年12月31日 23時) (レス) @page44 id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
わらべ(プロフ) - すみれさん» コメントありがとうございます!好き嫌いが極端に出そうで中々進んで行かない作品ですが、本当に書きたいものを書きたいままやっていました!そこで1人でも好きと言っていただけたので本当に嬉しいです!更新は遅めですが頑張ります! (2021年10月11日 20時) (レス) id: 34cdc8231e (このIDを非表示/違反報告)
すみれ - めっちゃ好きです〜更新楽しみにしてます!! (2021年10月8日 17時) (レス) id: 84d3b4ed7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらべ | 作成日時:2021年4月17日 12時