□ヒロインはヒロインですが、乙女ゲームのヒロインではありません。

「MISSION:手紙04」 ページ17

目には目を歯には歯を。
手紙で嫌な思いをさせられたなら同じく手紙でお返しを。

先生がこちらを見てない隙に私は鞄の中にある便箋を取り出す。
ノートの切れ端なんて使って私の努力が見えてしまっては勿体ないから。

もちろん、四つ折りなんて中身が見えてしまうかもしれない折り方もしなかった。
手紙交換でよく使う中身が見えにくく、可愛らしい折り方をわざわざ選んだ。
全ては予想外な演出の為に。

文面は至ってシンプル。無理です、の一言のみ。
けれど、その一言は渾身の血文字。

外面だけは可愛らしく女の子らしい手紙、だけど手紙の中はホラーテイスト。
このギャップにこのクオリティ、そしてそれを先生の目を盗んで三枚も完成させる私…！

三枚あればネタバレなく全員に仕返しできるはず。
よし、乙女ゲームの攻略対象に目に物見せてやろう。
ギャルゲーヒロインなめんなよ、の気持ちを最大限に出力して私はにこやかな笑顔で隣に座る白い悪魔へと手紙を渡した。


「どうぞ」


私に絡んできた恨みをここで晴らす。
恨みを晴らしたら二度と近づかない、話しかけられても全部スルー。
変な手紙を返してきた上に、会話は全く続かない。
これめちゃくちゃ気不味くて嫌な人じゃない？
バグったフラグも完璧に折れるくない？

…まぁ、嫌われすぎるのも後々のことを考えると怖いから殺されない程度に嫌われつつ、主人公くんとの関係改善！脱、幼馴染！ワンランク上の恋人へ！
ラブイベントを発生させてハッピーエンド回収！！


「あ、本当に書いてくれたんだ？」


…何だこの白い悪魔。

脅した癖によく言うね？？？
その憎たらしい口縫いつけてあげようか？私、裁縫も得意だよ？？縫ってあげようか？？？

てか、お望み通り手紙返したんだからもう絡んでこないでください。


「ﾌ、ﾌﾌｯ…二人にもわ、渡しておくね…ッ」


いや、何笑ってんの？
てか、一々声が大きい。
こっちはまだ君が押し付けてきた手紙の残骸が残ってるんだよ？片付いてないんだよ？マジで静かにしてて貰えます？？？

私がイライラしながら手紙の残骸を机の中にぶち込んでいると件の三人へいつの間にやら手紙が回っていたようだ。
それも、どういうわけか全員が同時に手紙を開けるという奇跡まで起こして。

うーん、これは私も想定外。


「はぁっ！？！？」
「！？！！、？」
「エッ！？！！」


もう一度言う、私も想定外です。

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