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私は、不良品だ。
目に見える傷がたくさんあって到底使い物にならなくなった不良品が今にも落とされそうなゴミ箱の縁に置かれて、貼られたレッテルの下の傷の痛みに耐えきれなくて死んでしまいそうになったことがあった。
その時、不良品に需要はないと自分を納得させて、自らゴミ箱に入った過去がある。
楽にはならないと分かっていながら、この世界を放棄することよりも一旦逃げることを選択した。
人生の終わりが明確に見えて絶望の淵にいたはずなのに、私はまだ、未来にほんの少し希望を見出していたのかもしれない。
未来がよくなる確率より悪くなる確率の方が断然高いことなんて、ちょっと考えたら分かることだったのに。
逃げたからって、現実は何も変わらない。
それは確かにそうだけど、逃げることで気持ちは確実に楽になった。
新品に生まれ変わることはできないけれど、努力と運次第で新品に近い状態にすることはできる。
ただ私の場合は人として根本的な部分を変えることができなかったから、一人でいたら結局、今までと同じ末路を辿っていただろう。
そして今度こそ、消えてしまったかもしれない。
そんな人生終わりかけの時に、たまたま紬と佐倉くんという、すごくいい人たちに拾われた。
私の視界と呼吸を完全に遮っていたレッテルを、二人が優しくはがして守ってくれた。
破れてビリビリになった包装紙を新しくして、ほどけてしまったリボンを美しいものに取り換えてくれて、表面をきれいに磨いてくれて……。
何百万という高値がつけられている宝石みたいな二人のおかげで新品の時よりもいい商品になれたけれど、私は二人に何もしてあげられることがない。
高級な宝石と道端に落ちている石ぐらいレベルの違う二人がなぜ、私を拾ってくれたのかが分からない。
実際今まで、私は誰にも拾われなかった。
もしかしたら二人は、ただ高価なだけの宝石じゃないのかもしれない。
この世で少ししか採れない、貴重な鉱石なのかもしれない。
高額なだけの宝石からは見えない何かが、二人には見えているのかもしれない。
この二人に巡り合えたことが、私にとって人生最大の幸運だと思う。
だからせめて、二人には迷惑をかけずに生きていきたい。
ただの石が美しい輝きを放つ宝石を傷つけることは、絶対に許されない。
見た目は磨かれてましになっても中身はただの石のまま変わっていない私に、そんなことができているんだろうか？
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