サクラソウの花言葉【silent】 (ページ5)

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そのまま戻るタイミングを失っていると、「キーンコーンカーンコーン」とチャイムの音が聞こえてきた。

次の授業は確か学活で、係決めだったっけ。

校舎から離れたこの場所から教室までは、ちょうど5分ぐらいかかる。

今から戻らなきゃ、時間に間に合わない。

「次の授業あるので、戻ります」

「そっか。じゃあ、俺も戻る」

少し前を歩く私の後ろを、その人が相変わらずイヤホンをつけて歩きスマホをしながらついてきた。

だいぶ教室に近くなってもまだ、その人は私の後ろにいた。

ちゃんと前見て歩いているんだろうか、と心配になってきた時、教室の扉が見えてきた。

開けた扉を閉めようとすると、「待って、俺も入るから」と手で押し戻された。

それと同時に二回目のチャイムが鳴って、先生が入ってくるのが見えた。

まさか、同じクラス…？

「同じクラスだとは思わなかった」

それはこっちのセリフです、と言いかけた言葉を飲み込んで、私は席に座った。

左隣を見ると、さっきまで空席だったその場所には、その人が座っていた。

お互い目が合って、でも、すぐに逸らしてしまった。

窓から入ってくる春の光がその人を、まばゆく照らしていた。

彼と一緒にいる時に感じる不思議なこの感情に、何と名前をつけたらいいのだろうか。

愛とか恋とか友情とかそういうのはよく分からないけれど、それらとはまた違う気がする。

でも、一緒にいると安心するし、夢の中にいるような感覚になる。

そんな私の人生最大の謎は、当分解決しそうにもなかった。