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「お待たせ」
「今から暇？行きたい場所あるんだけど」
「いいよ」
こっちこっち、と佐倉くんに案内されるがままについていった。
いつもと同じ方向の電車に乗って、車窓からいつもの景色を眺めた。
「どこ行くの？」
「内緒。着いたら分かるよ」
イヤホンをしたまま、佐倉くんがそう答えた。
教えてくれる気配もなかったから、話題を変えてみた。
「佐倉くん、何聞いてるの？」
「ああ、これ？……じゃあ、はい」
ちょっとはにかみながら、佐倉くんが私に自分のイヤホンを差し出した。
軽く会釈してからイヤホンを受け取って、早速それを自分の耳に入れた。
聞こえてきたメロディーに、びっくりした。
「……Snow Manの360m？」
「A知ってるの？」
「うん。私、Snow Man大好き」
「アルバムのユニット曲知ってる人なんてそうそういないと思ったけど、そうなんだ」
「びっくりした」
「俺も。Aの口からタイトル出てきて、ほんとにびっくりした」
「いい曲だよね」
「うん。他の曲も全部大好き。どの曲にもよさがあって、色んなパフォーマンスが見れるから」
熱が入ったように語る佐倉くんは、普段の様子とはまた違う気がした。
新たな一面を発見できたことに、心が躍った。
「分かる。佐倉くんとSnow Manの話できるのうれしい」
「もっともっと話したい」
「私も」
「この駅で降りるから」
佐倉くんの後に続いて降りた先は、最寄り駅以外で降りたことがない私の知らない駅だった。
最寄り駅のいくつか手前のその駅は、とにかくすごく広かった。
見渡す限りたくさんのお店があって、どこを見ても人、人、人。
平日の夕方だからといってここまで人がいるのか、と驚きを隠せなかった。
その雑踏の中をずんずん歩いていく佐倉くんとはぐれないように、必死で佐倉くんの背中を追った。
やっとのことで改札を抜けて、地上に出た。
会社員や学生、主婦など色んな人でごった返していたプラットフォームよりはまだ人通りの少ない大通りを、佐倉くんの後に続いて歩いて行った。
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