21. お人好し ページ21
玄関前に行くとすでに佐久間クンが待っていた。
壁に寄りかかりながらスマホをいじっている。
一昨日の仕返しにとバレないようにそろそろと近づき…
「……これから連絡しようと思ってたのに。」
とこっそり声を掛ける。
「ッうわぁ!?」
佐久間クンはびくりと身体を動かしよろける。
急いで佐久間クンの腕を掴んで引き寄せた。
「んな驚くなよ。
……怪我してない?」
「…あ、あぁ大丈夫だ。」
まさかこんなに驚くとはよっぽど気を抜いていたんだろう。
ふと、身体が触れるくらい距離が近くなってしまっていたことに気が付き少し離れる。
「その、早く来たのは誘った手前待たせるのは悪いと―――、」
そう乱れた服や髪を軽く直しながら話す。
しかし私に目を向けた瞬間、石にでもなったかのように固まってしまった。
何か変なところでもあっただろうか。
心配になり自分の服を見直すと、佐久間クンが焦って首を横に振った。
「あ、いやその…Aの私服を見たのが初めてだったから驚いたというか…。
……とても似合っていたから。」
そして恥ずかしそうに口元を押さえ目を逸らす。
佐久間クンの素直な反応にとても嬉しくなってしまった。
思わず口元がにやけてしまう。
「…あんま恥ずかしいこと言ってンじゃねーよ
ほら、早く行こーぜ」
どうにか悟られないように背を向け、フェリー乗り場まで歩き出した。
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作者名:リリィ | 作成日時:2022年9月11日 11時