17. 星月夜3 ページ17
『……お前の事を大事に思っているのは不動だけじゃない。』
その言葉にAは『流石佐久間センパイは仲間思いの良いキャプテンだねぇ。』と茶化すように言った。
不器用なりに少しでも自分の気持ちを伝えようと思ったんだが……
難しいな、気持ちを伝えるというのは。
「あぁ、当たり前だろう?大切な仲間を傷つけたりしないさ」
上手くできているか分からないが、どうにか良い先輩を演じる。
Aは不思議そうにこちらをじっと見つめていた。
そしてずい、と顔を近づける。
あまりの距離の近さに緊張し、少し後ずさりしてしまう。
「な、えっ…と…ど、どう、したんだ?」
どうにかそう問いかけるとAはハッとして離れた。
「…なんか辛そうな顔してたから気になって、悪い………。」
そう言って恥ずかしそうに目を逸らし髪の毛を触る。
その姿が堪らなく愛おしく可愛く見え、
どうにかしてしまいたくなる気持ちをぐっと堪え、優しく頭にぽんと手を乗せ撫でた。
Aがびくりと身体を動かし、目を丸くしこちらを見る。
そして火をつけたようにみるみる真っ赤になった。
「なっ……なにすンだよ…」
真っ赤になりながらじっと見つめてくるが振り払ったり拒絶したりはしなかった。
「お前が――……、お前が心配してくれたのが嬉しくてな。
…だが心配しなくても大丈夫だ、ありがとう」
そう言うと手をそっと離す。
可愛かった、愛おしいと思った――だなんて言えるわけもない。
頼りになる先輩、今はそれでいい。
「……佐久間くんに撫でられるの、すごく好きだ。
兄ちゃんに撫でられるのとはまた違うけど、なんか安心する。」
そう言ってそっと俺の手をとり、両手で優しく握る。
そして真剣な瞳でじっと見つめた。
「…佐久間くん、絶対に絶対に明日の試合勝てよ、勝って無事に戻って来いよな。」
今までに見たことが無い程芯が強く真剣な言葉。
俺はその言葉に力強く頷く。
「ああ……勿論だ、約束するよ。」
俺の返事を聞くとAは満足そうに笑みを浮かべた。
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作者名:リリィ | 作成日時:2022年9月11日 11時