２２． 幸せに歩み寄る不穏(不動視点) ページ27
俺の手を無理やりひいてどんどん歩いていく。
初めて遊園地に来た幼稚園児のように目を輝かせている。
こんなにはしゃいでいるAを見るのは初めてだった。
……それもそうか、幼い頃は貧乏でこんな場所に来れなかった。
今の家では、金は渡されるが、生活をすることで精いっぱいで旅行に行こうなんて思わなかった。
真帝国のときだってせっかく京都に行ったのに観光どころじゃなかったしな。
幼稚園児みたいにはしゃぐのも当然なんだ。
Aは韓国戦の時にみんなの前で大泣きしてからタガが外れたのか、みんなの前でも平気で兄ちゃん兄ちゃんと言うようになった。
それが良いことなのか悪いことなのか――…まぁ、多分良いことか。
自分の気持ちをさらけ出せるということは周りの奴らを信用するようになった、ということなのだろう。
ふと、海の前にある店の前に着くと立ち止まり、目を輝かせる。
「バナナソフトだ！あ、チョコバナナクレープもある！
…なぁなぁ、買っていい？」
こちらを振り返ると物欲しそうな目で見てねだる。
この目は知っている、絶対に買ってもらえると信じて疑わない目だ。
きっと俺が許可してくれると知っているんだろう。
ここまで期待されていると意地悪をしてダメだと言いたくなるが、こんな場所に来たんだ。
「…いいけど、どっちかにしろよ？」
俺の返答に嬉しそうに笑う。
目を輝かせながらどうしようかな、と悩む姿を見ると意地悪をしなくて良かったと思える。
悩んだ末にバナナソフトを買うと、ニコニコしながら戻ってくる。
そして食べていないにもかかわらず俺に差し出す。
「兄ちゃんに一口目あげる！」
「いいのぉ？…でもお前が食いたくて買ったンだろ？
一口目貰うのは―――、」
「いいから！！！」
俺が言葉を発する前にぐいぐいと押し付ける。
仕方なく一口食べる。
口の中にふわりと柔らかい甘さが広がる。
思わず顔を綻ばせる。
「ん……うめぇ！」
俺の反応に満足そうに笑う。
そして自分も一口食べると同じように顔を綻ばせるのだった。
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リリィ(プロフ) - Kariaさん» コメントありがとうございます、本当に嬉しくて何度も何度も読み返してはニヤニヤしてしまいました。とても励みになります！ (2022年3月29日 1時) (
レス) id: 5fb9ab7224 (このIDを非表示/違反報告)
Karia(プロフ) - この作品は、今までに見たイナイレの夢小説の中でもトップに入るぐらい好きです。素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます！ (2022年3月26日 22時) (レス) @page5 id: 03658bccca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リリィ | 作成日時：2022年3月22日 16時
