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___男性恐怖症、といっても私は社会人。
パーソナルスペースに入らなければ耐えられるし、
手が触れると少しゾッとはするものの。
お仕事と割り切ればたいした問題じゃない。
……" 仕事 "、であれば。
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??「あ、薄井さん。」
「はい。なんでしょう。」
話しかけてきたのは、少し先輩の谷部さん。
ふわりと巻いた髪が可愛らしく、私より若く見えるのに30歳だというんだから不思議だ。
谷部「もうお昼入っていいですよ〜。変わりますね。」
「あ、ありがとうございます。」
谷部「はーい、いってらっしゃ〜い。」
カウンターの後ろのドアを開けて、
……ふぅ、と息を吐く。
その先にある控え室のドアのノブを、重々しく捻った。
___ギィ、
開いた部屋の窓際。
案の定、そこにいる人物と ぱち、と目が合う。
??「………。」
「(シカト……)」
パタンと扉を閉じて、木のロッカーからお弁当をとる。
パイプ椅子と簡易な長テーブルの端と端。
私と彼の定位置だ。
「…いただきます。」
手を合わせて、お弁当をつついてミートボールを口に放り込んだ。
…変わらずカタカタと無機質な音は止まない。
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チラ、と彼の方を盗み見る。
すこし目にかかっている長めの前髪に、
細めの銀フレームの眼鏡。
大概軽めの黒シャツに、ジーパンかスキニー。
そのイケメンなお顔とさらりと揺れる黒髪に、女子ならキャーと騒ぐんだろう。
「(まあ、私からすれば上司の息子さんだけど)」
そう、彼は何を隠そう館長の息子さん。
近王子大学の学生さんで、頭が良いらしい。
常々この図書館を利用していて、いまやこうしてバックヤードでレポートを書いてらっしゃる。
…つまるところ、私はこの人が苦手。
仕事外で、しかも若い男性。
でもまだ息ができるのは、彼も私の事を嫌っているのか、一言も会話したことがないから。
「ごちそうさまでした。」
永瀬「……。」
カタカタカタ、と無機質な音だけがまた響く。
いつもの事だ。…私もいつもの事をしよう。
「(そうだ、今日は良いところだった。)」
開いたのは、瀬麗奈-セレナ-さんの小説。
大人気のミステリー覆面作家さん。
いつか素性を明かしたら、
勇気をだしてサインを貰いたい。
…と思えるほど、この人の美しくてどこか陰鬱な文に心惹かれている。
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あき。 - 新作公開、おめでとうございます。おかえりなさい!が合ってますか?笑 平野のイメージぴったりでやっぱり雪乃さんの描くお話は大好きです。引き続き雪乃さんのペースで更新がんばってくださいませ。 (2019年4月1日 18時) (レス) id: 1e1b84a358 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪乃 | 作成日時:2019年4月1日 3時