プリマヴェーラ[d/!] (ページ3)

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「そういえば、貴方にいいニュースがあるんです。」

そう言って白ワインを口に含むエーミールに、窓の外に向けていた視線を、きらびやかなレストランの中に戻す。シャンデリアがキラキラと反射する。エーミールはいつもこんなおしゃれなところを選ぶのだから、見る目はあるのだろう。そうやって私の好奇心さえも擽ってくるのだから。

「へぇ、どんなニュース？」

「とある民家の開けられていなかった地下室から、それはそれは芸術性の高い絵画が見つかったのですよ。」

「……へぇ、何それ。詳しく聞かせて？」

シャンパンを飲む手を中断させて、身を乗り出す。すると、やっぱり食いついてきたか、だなんて顔で笑うエーミール。彼の手帳から一枚の写真を取り出すと、私に差し出した。それを受け取って、マジマジと見つめる。

「推定1000年前の絵画だと思われます。かなりの完成度、この時代には不可能に近いはずなのですが……」
「……男が嘆いているわね、その奥には、燃え盛る街のようなもの……」
「えぇ、適当さが見当たらないのです。誤魔化してもおかしくなさそうな場所が、ひとつも。」

写真はある民家のシェルターで撮ったもの。あまり画像がクリアに表示されていないため、細かな装飾まではわからないが、男が、……祖国であろうか、燃え盛る街を高い丘から見下ろし、嘆く絵であった。男の他に何人か人がいるのも分かる。心痛い絵画だ、この瞬間を絵に閉じ込めてやろうとした画家も、大層心痛い。しかし、エーミールの情報と絵を照らし合わせて、首をかしげる。

はて、こんな絵画、本当に1000年前に存在していたのだろうか？

……1000年前、エーミールの言った数字は、色の落ち度からしてほぼ的確だと思われる。しかし、それは普通"ありえない"事なのだ。