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馬鹿な事をしようとしているって事は、自覚していた
自棄になっているだけだって、分かっていた
でも、僕はもう普通に生きる事は出来ないけれど、彼らはきっと、新たな人生を歩むことが出来る
彼らには帰りを待つ家族がいて、望んだ未来があって、そしてそれは、決して叶わぬ夢ではないのだ
もう一度、ぐるりと周りを見渡せば、眠り続ける唄い手たちの姿が目に飛び込む
そこにはもう、迷いは無かった
「例えば、そう・・・今までの僕の人生を捧げることで、釣り合いがとれたりはしませんか?僕が生きてきた道筋を、この国に生まれた事実を、僕の存在に関する人々の記憶を差し出せば、彼らを救う事は出来ませんか?」
「自ら、それを望むというのか」
「はい」
ほんの少し、驚いたように見開かれた金色の瞳
僕は目を逸らすことなく、それをじっと見つめ返す
やがてその唇から、小さな笑い声が溢れた
「他者の為に犠牲を厭わぬその姿。正しく、はじまりの御子と瓜二つ。これに応えられぬようでは、神の名折れよ」
たん、と一つアポロが足を踏み鳴らすと、部屋の四隅から光の帯が沸き起こった
縦に横にと広がったその帯は、部屋の中央で一つとなり、合わさったそばから細かな光の粒となって、唄い手たちへ降り注ぐ
空間を満たしていた光の粒子の一つひとつが、唄い手たちへ吸い込まれて行き、そして最後の一つが消えた時
止まっていた彼らの時間が、一斉に動き出したのだった
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しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、最後まで読んでいただきありがとうございます。中々辛い展開ばかりではありますが、少しずつハッピーエンドへ向かっているはずです。救いの手が差し伸ばされることを信じて、次章を楽しんでいただければ幸いです。 (2020年12月6日 17時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、お疲れさまです。やっと会えたのに辛いですね。翔くん、自分が逆の立場だったら?大切な人の犠牲の上では嬉しくないという事も解った上で、智くんを助けたいのでしょうが、智くんには辛いだけですよね。どうにか救いの道がありますように。 (2020年11月29日 15時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、こちらでもコメントありがとうございます。今作の翔くんは、自己犠牲精神が強すぎるんですよね…。でもきっと、大野さんが救い出してくれるはずなので、どうか見守って頂ければ幸いです。今作も是非お付き合い下さい! (2020年11月11日 23時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、更新ありがとうございます。翔くん目線でのお話し楽しみです。でも自分を犠牲にしている翔くんは、翔くんが納得していても悲しいです。 (2020年11月11日 12時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅり | 作成日時:2020年11月10日 18時