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「ふふ・・・。ね、翔くん、また歌ってる」
「えっ、ほんと?気付かなかった・・・」
「ほんと、この歌が好きなのな」
「うん、すごく好き」
二人で学校に向かう道すがら、ふんふんと無意識に口ずさんでいたのは、あの日智くんが歌ってくれた、夢の国の歌
あれから何かにつけて智くんに歌ってほしいとねだっては、何度も聴いているうちに、僕もすっかり覚えてしまっていた
「でも、学校では歌うなよ」
「わかってるよ。智くんこそ、授業中に居眠りしちゃだめだよ?」
「へいへい。・・・そんじゃ、また帰りにな」
「うん。ばいばい」
教室が違う智くんとは、学校に入ってすぐの階段の前で別れることになる
智くんはそのまま二階に上っていき、僕はその背中が見えなくなるまで見送ってから、一階の奥にある自分の教室にとぼとぼと向かう
思わず下を向く視線をどうすることもできず、そおっと教室の扉を開けたら
「っ、いた・・・」
「あったりー!」
「あーあ、お前また来たのかよ。落ちこぼれ」
「ほんと、なんでこんな薄汚い庶民と一緒に学ばないといけないのかしら」
「言うなって。またすぐ泣くぜ、こいつ」
あはははは、と教室中が嫌な笑いに包まれて、僕はぎゅうっとシャツの裾を握りしめる
扉を開けてすぐ、僕に向かって飛んできた分厚い本
見事にぶつかったおでこがじんじんと痛むけれど、そのまま立ち尽くしていても碌な目に合わないことは、よく知っている
重い足をどうにか動かして、一番後ろの自分の席に向かった
.
.
勉強は好きだ
村で家の手伝いをするだけじゃ分からないことを、たくさん知ることが出来るから
学校も嫌いじゃない
智くんと二人、いろんなことを話しながら通う時間は、あっという間に過ぎてしまうほどだ
でも、教室の、この空間は好きじゃない
僕が何かをする度に、くすくすと嫌な笑い声が波紋のように広がる
僕の薄汚れた服と違って、きれいな制服に身を包んだクラスメイト達
彼らはみんな上流階級の、いわゆる貴族と呼ばれる存在
それに対して、本当なら学校に通うことなんて出来ない、小さな村の農家の生まれの僕
彼らが僕のことを虫けらでも見るかのように扱うのも、きっと仕方ないこと・・・なんだと、思う

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しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、コメントありがとうございます! 翔くんについつい辛い役回りをさせてしまいがちで、申し訳ない限りです。 やっとこさ移行が完了しましたので、是非またお立ち寄りいただければと思います(*^^*) (9月22日 18時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、お疲れさまです。お話し楽しく読ませてもらっています。翔くん健気すぎますね。身代わりになったとき智くんの気持ちを思うと辛いです。ハッピーエンドになると嬉しいですが、続きを妄想しながら更新お待ちしています。 (9月19日 14時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - あかりさん» あかりさん、コメントありがとうございます!一応金曜日頃までは更新予定ですので、引き続き足を運んでもらえたら嬉しいです(*^^*) 数日お休み頂いたら、また毎日更新頑張ろうと思いますので、是非楽しみにしていて下さい! (9月16日 21時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
あかり - 毎回更新されるのを楽しみにしています。移行のためしばらくお休みされるのは残念ですが、待つ時間も楽しみたいと思います。 (9月16日 14時) (レス) id: 43ef596bac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅり | 作成日時:2020年8月30日 16時