大学1年生・夏 ページ29
「あっ、ありがとう、ございます。怪我とかない?」
彼女は慌てて立ち上がり、僕に手を差し出した。そのまま引っ張られ立ち上がる。
「いや、別に……」
怪我なんてない。
ただ、お前の顔を見るのが辛いだけやで。
こんなに近くにいて、こんなにも好きなのに、それを伝えたらお前はきっと、また死んでしまう。そうやろ。
「念のため病院とか」
「いやええから」
「でも」
「しつこいなホンマ、別に痛みもそんなにないし」
彼女の手を振り払う。
悲しそうな顔せんとって、お前は俺に関わったらろくなことにならへんから。お願いだから、僕のことなんか嫌ってほしい。
「なにか、お礼させて」
どうしてそこまで、……すがるような目で、俺を見んとって。
ここで折れたらあかん。
徹底的に嫌われた方が気も楽だ。
「ふーん……お礼してくれるっていうならまぁ?やぶさかではないな」
わざと下品に笑って見せる。初対面でこれはかなり気持ち悪いやろ。
「例えば、ご飯奢るとか」
「そういうのはええ。わかるやろ?」
ぐい、と引っ張ると、至近距離で目が合う。その顔は驚いたようではあるが、恐怖している様子はない。
「なんで逃げへんの」
逃げて、いっそのこと嫌ってくれれば諦めもつくかもしれへんのに。なのに、
「本気じゃなさそうだから、かな」
お前は、なんで。なんで。
真っ直ぐな瞳、このままだと飲まれてしまう。
「お礼はええから」
彼女から距離をとって、そう言い捨てた。
僕は逃げた。
きっとそうすることでしか、僕は彼女を救えへんから。
371人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千白は山に住む(プロフ) - 凡人さん» ありがとうございます!私もお気に入りで、昔かいたものなのについ番外編を書いてしまいます!そう言っていだだけるのならここに更新しに来てよかったー!と思えます!ありがとうございました! (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - bhさん» 長らくお返事できていなくてすみません!ありがとうございますー! (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
凡人(プロフ) - 更新されていてびっくりしました。私が本当に大好きなお話です...ありがとうございます! (2020年6月5日 18時) (レス) id: 0a526fe040 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、これからも応援しております。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 水澪恋さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!あげて落とす仕様でしたが楽しんでいただけていたら本望です!ありがとうございます、今後もがんばります(*^^*) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ