後輩 ページ21
《氷鷹side》
噂には聞いていたが、あんなに美しい人だとは。
男性に美しい人という表現も変かとは思うが、それ以外に説明のしようがない。
初めて会ったとき、息が詰まったほどだ。
あんな思い、今まで感じた事がなかった。
きっと、これを世間では一目惚れと言うのだろう。
あのとき、良い印象を残そうと、保健室に残ってジゼルさんの手伝いでもしようかと思ったが、ふと頭の中におばあちゃんの教えがよぎった。
一目惚れした相手には、ゆっくり時間をかけて親しくなること。焦ってはいけない──と。
最初は名前と顔を覚えてくれれば上出来だ。
はたして、俺の事は覚えてくれただろうか。
よって、俺は素直に彼の言うことを聞き入れ、ここに戻ってきた。
「あの人ハ?戻って来ないノ?」
「当分戻って来ないと思うぞ」
「そウ」
そっちが訊いてきたというのに、随分素っ気ない返事だ。そう言ってやろうとしたが、食事姿がなんだか寂しそうに見えたので止めにした。
一つのテーブルに4つの席。4つの料理。2つの空席。不思議な光景だな。
俺は一人、口端を上げた。
賑やかな空間にぽつんと静かなテーブルが出来上がった。生憎俺も逆先も性格上フレンドリーではないため、話が盛り上がらないのだ。
だが、空気が重いわけでも気まずいわけでもない。気の落ち着く、心地の良い時間だ。
すこし経って、半分くらい食べ進めたところで、入り口の方から俺の名前が呼ばれた気がした。気のせいだろうか。
「ほら、ホクト先輩デスよ、友也ノ好きナ」
「ちょっ……いや、す、好きだけど……!」
この男性にしては高めで年の割りに大人っぽい声は間違いなく青海の声。
その次に聞こえた年相応の普通な、あえて言うなら可愛い声は真白の声だ。
どうやら気のせいではないようだ。
「真白、青海」
振り返って声をかけると、二人揃って会釈をしてきた。可愛いやつらだ。
「……ホクト先輩、もしかしてそのカレー、ジゼル兄様ノデスか?」
青海が近づいて来て、4つある内の一つの料理を指差した。
「ん?ああ、そうだが」
どうして分かったのだろうか。
「ハァ……こんな毒物、公衆ノ前面ニ晒したら危険じゃないデスか。兄様、ここニ戻って来マス?」
「いや、来ないだろう」
首を横に振ると、青海は着席した。
というか、毒とは何の話だ。
「なら、私ガ頂いてしまいマスね」
涼しげな顔で兄の食べ残しを食べ始める青海のことを、逆先は驚愕の表情で見ていた。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……!ご指摘ありがとうございます! 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。「混沌」でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - 「悩み」の話の「敬人」が「敬斗」になってますよ(コソッ面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります!(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流離いのsecret | 作成日時:2019年5月2日 14時