サイコ・セラピスト【あんスタ】

家族愛 ページ4

「はぁ……ただいま」
おかえり、と返してくれたのは3人の可愛い弟妹。どうやら父さんはまだ帰って来ていないようだ。でも、もうすぐ帰ってくるだろうな。
ああ、何て言おう。
明日から夢ノ咲でカウンセラーなんて、信じてくれるだろうか。
なんとも気が重い。

「……ジゼルお兄ちゃん？今日はお疲れなの？」
リビングのソファに身を沈め考え込んでいると、Aが隣に座り心配してくれた。
なんて出来た妹なんだろう……！

「A、僕が学校で働いてたら嬉しい？」
率直に訊いてみた。
「うん！学校でもジゼルお兄ちゃんに会えたら嬉しい！」
あ〜……可愛い……癒される……。
明日からは僕が癒す役目なのにな。

「僕、明日から頑張るね」
「ん？うん、頑張ってね！」
Aは何も知らないまま、僕を勇気付けてくれた。頑張って、の一言だけで、気持ちが楽になった気がした。

「ただいま」
父さんの声だ。
「おかえりなさい、父さん」
ひとまず、謹慎の話は置いておいた。
帰って来て直ぐに、息子が転職します〜なんて聞きたくないだろうから。
「ああ、ジゼル。先程院長から電話で聞いたよ、大変だったね」
あ、知ってたんだ。

「怒らないの……？」
「怒るって、何をだい？」
「だって、こんな早急な話を呑んで、明日から出勤なんて……」
少々浅はかだった自分に反省して、視線を落とす。でも、父さんはそんな僕を叱るのでもなく、突き放すのでもなく、寄り添ってくれた。
「それなら、大丈夫だ。私がついている」
頼もしく微笑む父が、最高に格好よく見えた。

「しかも、カウンセラーは非常勤職員だから、週2日の勤務で事足りるんだ」
夢ノ咲では、火曜日と金曜日に出勤すれば良いらしい。へえ、そんなものなのか。
……医師より楽そうだな。
いや、楽な仕事なんて何一つ無いけれども。

「実は、早速カウンセリングの依頼が一件きているんだ」
「俺氏のカウンセリング、ヨロシクね、兄さん！」
父さんの陰からひょこっと出てきた弟。
傷によって、だが、常時ウインクをしている事が拍車をかけて、更にお茶目に見える。

「シークのカウンセリングか……僕に出来るかな？」
「兄サンなら楽勝デショ！」
「犯罪者の心理が分かるのは犯罪者、狂人の気持ちが分かるのは狂人……。なら、僕も狂人にならないといけないのかな？」
「ソノ冗談が言エルなら大丈夫」
うん、調子が戻ってきた。
これも家族のお蔭だな。

明日から、頑張ろう。

初出勤→←スクールカウンセラー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す