寝ても覚めても。２ (ページ8)

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最近

Aはよく笑う

そんなに面白くなくても
にこにこヘラヘラ

よく笑っているのに元気がない

いつ「どうした」って聞こうかずっと迷っていて
でもきっと
こいつは自分の弱みを
俺には見せてくんないんだろうな

それをわかっているから
空元気のAを見てることしかできない

あんなに大好き大好きうるさかった三人の話を
最近は全然しなくて

用がなくても出歩いてた授業と授業の間も
教室でずっとにこにこ

移動教室の時は
そんなずっと一緒にいるわけでもないけど

何度か見かけた廊下でのAは
以前みたく大好きな彼らを探してキョロキョロしてなくて

自分のつま先に気を取られているみたいに
うつむいてた

能天気な奴が元気がない

嫌でもわかる
ずっと見てるからわかる

Aの中の気持ちに変化があった証拠

どう変わった？

幼い頃からの憧れみたいな恋愛感情が
ひとつ

大人になったのかもしれない

俺の入る隙間を探す
必死で

そんな俺の気持ちなんか全く知らず
Aは同じクラスの乾と仲良くなったりしていて

焦りは積もる

「はい」
潤「…なに、」
「飲むヨーグルト！」
潤「見ればわかるけど(笑)」

５限目が終わった後
どっかに行ったなーと思っていたAが
帰ってきたと思ったら俺の机にピンクの紙パックを置いた

潤「くれんの？」
「うん」

ちょっと得意げなのはなんでだ(笑)

潤「…いちご味？」
「そう。松本くんっていちご味っぽいもんね」
潤「…そう？どこが？」
「王様！ってかんじ」
潤「…果物の？それはドリアンだろばか」
「え？そうだっけ？でもドリアン味はないもんなあ」

そもそもドリアンてどんな味？
とか言ってるこの女

なんなんだ

可愛すぎんだろ

潤「なんでくれんの？」
「…んー、松本くん、さっきちょっと怒ってた」
潤「…」
「から、…ごめんね？」
潤「なんで怒ってたと思うの？」

大きな瞳が俺をじーっと見る

これっぽっちも俺のことを意識していない
まっすぐな視線

「…うーん」
潤「ん？」
「うーーーーーん」
潤「わかんねーよな、ばーか」

なんだとー！って怒ってるAに気づかれないように
もらった飲むヨーグルト持つ手に力を込めた

これだけで
こんなに嬉しいんだから

たぶん俺も相当バカだ

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