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その身の証明―4※ ページ14

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()()()まった衣服(いふく)はボロボロだ。それでも、その身は赤に染っていても、(きず)1つ()状態(じょうたい)(いや)されていた。

 ハハ、ハハハハ――という(わら)い声が(ひび)く。この時、王は()めたのだろう。彼女を裁定(さいてい)すると。

 やがて笑い声は()む。

「その見窄(みずぼ)らしい姿(すがた)をどうにかしろ」

 王はそう(はな)った。

満足(まんぞく)、したんですね――?」

 と、機嫌(きげん)(そこ)ねないように(うやま)いながら(たず)ねた。一刻(いっこく)(はや)く、この状態(じょうたい)をどうにかしたいからだった。

「A……服は用意できるかい?」

「直していいなら、ここで直す」

 透き通った声を通して、エルキドゥの言葉に彼女は反応した。

「君が言ったんだから、直してもいいんだよね?」

「――好きにするがいい」

 王はそう零すと、後ろを向いて歩き出す。金色の鎧が、カシャンカシャンと音をたてた。

「大丈夫かい――?」

「――構わないで」

 エルキドゥが近づいてきて訊ねると、彼女はそう言った。

 彼女は膝を立てて立ち上がりながら、真っ赤に染まった衣服を元に戻す。

 その場に衣服に染みた血が流れ、白い衣服に戻る。いや、正確には『なおした』というのが正しいだろう。それが、彼女の持つ起源の1つ目なのだから。

 彼女は後ろを向くと、エルキドゥに手元が見えないように直刀を手にして、地面に突き刺した。エルキドゥには直刀は見えない。彼女が見ても構わないと許可していないからだ。

 それでも、手元は何かを掴んだ形になってしまう。そのために、彼女は手元を隠しながら突き刺したのだ。

「洗ったらすぐ戻る」

 そう静かに漏らして、彼女は外套(がいとう)と不可視の武器を置いて消える。近くの水場を探して。

 ただ、エルキドゥは悲しそうに、彼女のいなくなった場所を見ていた。


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彼女が秘めた嘆きの声→←その身の証明―3※



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葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» こちらこそ、いつも有難うございます。はい。英雄王の印象は関わる前から最悪でした。絶対に関わるべきじゃないと思ったのにと。エルキドゥはそうですね。有難うございます。ほのぼのしていただけたなら良かったです。 (2019年5月8日 10時) (レス) id: fc9c29b555 (このIDを非表示/違反報告)
清華@1話ごとの題名の付け方教えて(プロフ) - 質問回答ありがとうございます!やっぱりギルは悪印象なんですね!エルキドゥには最初から印象が良いのが、意外ではないですが──なんでしょう。とにかくほのぼのしました! (2019年5月8日 9時) (レス) id: d3cf4c2f26 (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月7日 16時) (レス) id: 1078c15fa9 (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» いつも有難うございます。お気に召したようで良かったです…!こちらこそ、リクエスト有難うございました。花についてのリクエストはお時間頂いてしまうと思うので、そちらはすみません。調べて書けそうになったら書かせて頂きますね。 (2019年5月7日 16時) (レス) id: 1078c15fa9 (このIDを非表示/違反報告)
清華@1話ごとの題名の付け方教えて(プロフ) - シルカッコいい‥‥‥そして優しい‥‥‥素敵なお話ありがとうございます!! (2019年5月7日 13時) (レス) id: d3cf4c2f26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:竜胆叶華 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月7日 0時

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