最愛 1 (S.S) (ページ15)

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社屋を出ようとした時

「A!!」

って呼ばれて。

この声は間違えるはずもなく、櫻井課長だ！

一瞬でニヤけてしまったけど必死で噛み殺して何でもない普通の顔を作って振り向く。

「なんだよ、変な顔して(笑) ヘラヘラするほど嬉しいのか？」

〈そうです、そうなんです、心の奥底から嬉しいんです。〉

「ヘラヘラしてませんって。こんな顔なんです。(笑)」

「そっ？週末だから浮かれてんのかと思った(笑)」

「あー、それはあります(笑) 」

でも変な顔になるくらいヘラヘラしてるのは、櫻井課長のせいです！なんて言えないし、言わない。

「もうみんな先に行ってるって。Aは残業？」

「はい。今日は朝から専務のお供でしたので、帰社してから溜まった仕事を片付けていたらこの時間になりました。」

「ニノは？」

「定時きっかりにヒラヒラ手を振って超笑顔で先に帰りました。」

「あははは！ずいぶんな先輩だな(笑)」

「でも、そのおかげで·····。」

「ん？おかげで？」

〈櫻井課長と一緒に並んで歩けてます。〉

「きっとお酒が美味しいです(笑)」

「Aはいい子だな。(笑)」

私の脚は今きっと宙に浮いてる。

そして脳内に録音された〈いい子だな〉をこの先何億万回と再生するの。

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