序章 ページ1
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関西にある某所。
時刻は昼時。蝉さえも鳴かぬ程の猛暑である。学生達は夏休みを迎え始めたそんな時期。川沿いにひっそりと立つお堂に数名の若い男女が訪れた。
「ほ、本当に祟られるの?」
「さぁなー、でもネットの口コミとか見たら結構祟られたっていう書き込み多かったし」
「聞いた話つーか、なんていうか。祟りっていっても転んだり財布落としたりっていう可愛いものみたいだぜ」
「いや財布落とすのは洒落にならないじゃん」
口調からして地元の者ではないと見える。おそらく、いや十中八九夏休みを利用して肝試しをしに来た学生だろう。夜でないところを見る限り、臆病者がいるに違いない。
「止めておこ? ほら、危ないかもしれないし」
現に、一人の年若い女性が怯えたように他の男女に促していた。顔面蒼白とは言わないが、こういった人ならざるモノに対して興味本位で関わることはいけないことだと理解しているのだろう。
「えー。県まで越えてここまで来たっていうのにさ、それはなくね?」
「そうそう。それにまだここのって可愛いものじゃん? この県って怪奇スポットとかそこそこあるみたいだし」
「せっかくだしさ、怖いって噂のところ全部見回ってみたいよねー。山側の方とかガチなの多いって聞くし」
聞く耳持たず。
そうこうしている内にお堂の前まで辿り着いてしまった一行。
定期的に手入れをされているのか、まだ小綺麗であった。しかし、燦々と照り付ける太陽によってどことなく怖い雰囲気は出ておらず。どちらかというと何もない、むしろ神社仏閣のような雰囲気が醸し出されている。
試しに中に入れるのかと代表の一人が格子戸を押してみるが錠前によって確りと鍵を掛けられている。だが、お堂に中には
「地蔵あったよ」
中を指差した。他の仲間も臆病者一人以外は格子戸の隙間から口コミで聞く地蔵の姿を見る。手入れをされているのか、特におかしい点はなく。他の地蔵のように微笑んでいるように見える。
「とりあえず拝もうぜ」
「投げ銭すればいいんだっけ?」
「それって神社じゃね?」
「……」
各々財布を取り出して好きな金額をお堂の中へと放り込む。木製の床に小銭が落ちる音が響いた。色褪せた十円玉がコロコロと地蔵の前にまで転がり込むが何もなく。
一人を除いた若者数名が、地蔵に向かって両手を合わせた時に異変は起こった。
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2021年7月21日 17時