番外編【立花仙蔵の思惑】 ページ49
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こちらのお話は「空っぽを埋めるモノ3」記憶113から記憶115のアナザーストーリーになります。
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紫陽花に桔梗に
木箱の中で綺麗に並べられた四季折々の花たちに、私は自然と感嘆の声を漏らした。
「へぇー。さすが、高いだけはありますねぇ」
後ろから覗き込んできた綾部喜八郎が興味があるのかないのか、判断に迷う声音で言った。
「ほかの委員会にはバレないようにしなくては、ですね」
喜八郎のさらに後ろから、浦風藤内が喉を鳴らした。
「そうだな。とくに、保健委員にでも見つかればどんな恨みつらみを聞かされるか」
なんて言うが、伊作たちに限ってそんなことはないだろう。
保健委員の予算不足がどんなに深刻な問題だとしても、彼らの性格上考えられない。
冗談めかしてやると、笹山兵太夫は「むしろ見せびらかしてやってもいいんじゃないですか?」といたずらっぽく口角を上げる。
「いらん問題を起こすなよ。それにこれは……」
これは、あいつの手柄があってこそなのだから。
脳裏に浮かんだのは、鍵を見つけたあの時の顔ではなく、雑木林の中で困惑と哀しみを混ぜたような顔をしたAの顔だった。
「これは……なんですか? 立花仙蔵作法委員会委員長?」
なぜか言えなかった言葉の続きを、黒角伝七が急かすように復唱した。
「いいや、なんでもない。さて」
四かける四。
一六個のそれらを作法委員会で分けるならひとり三つ、あまり一。
「……ひとり三つずつ取るといい。私は残ったものをいただこう」
見目のいい菓子なので、そう言われれば喜ぶ下級生たち。
三つという制限の中でああでもないこうでもない、これだけは譲れない、やはりこっちに……と一気に賑わいだした。
どうせ腹に入れば同じだろうに。
ふうと息を吐き、ひとりいつまでもその中に入らずに、不満げにこちらを睨んでいる喜八郎を見た。
「立花先輩ってばずるいですね。何も言わずに最後の一個を自分のにしてしまうおつもりですか」
先に三つを選ばせたせいで残る四つを全て私のにするための魂胆。
そう思われてしまったらしい。
「さてな。……おまえたち、選び終わったら食べるのは部屋でにしろよ」
そう声をかけると部屋には私と喜八郎。
そして、七つの落雁が残された。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時