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「そろそろ、離れて頂きたいのですが……」
おずおずと視線を逸らしてそう言う高坂に立花は意地悪く微笑んだ。重ねていた手は立花の二の腕を掴んでいて、どうにか離そうと力を込めている。
「何故だ?」
そんなの、理由は一つしかない。
この距離感が恥ずかしくなってきたからだ。
心音が相手にも聞こえているのではというほどの距離。
「やはり、お前といると平静を保てなくなる」
「やっぱり、あなたといると心がかき乱されます」
同時にしゃべり出したが相手の言葉をしっかり聞き取れた。言葉は違っても、言いたい事は同じ。
二人はまた笑った。
しばらく笑って、どちらともなく笑うのを止めて。
視線があって、そういう雰囲気になる。
立花との距離が近付いていき、高坂は目を閉じた。
___触れた。
ゆっくり離れて、でも少し動いたらまた触れてしまいそうな距離で止まる。
「私の隣では不満か?」
「……そうじゃ、ないですけど」
お邪魔ではありませんか?
本人としてはここに残りたい。
向こうに未練ややり残した事がない訳では無いが、どちらか片方しか選べないとなった今、こちらに残りたかった。
でも元々存在していない自分は皆にとって邪魔になるかもしれない。そう考えると向こうを選ぶしかなかったのだ。
「そんなふうに思う奴いないさ」
それに、と言葉を繋げてまた唇が重なった。
「私が離れたくない」
「今の言葉、忘れないですから」
「ああ」
「捨てられたら執念深く追いかけますよ」
「ないから安心しろ」
「まずは怪我の手当からですね」
土だらけで、もしかしたら雑菌などが入ってる可能性がある。汚れを落として消毒をして……と頭の中で手順を確認する。
「……選んでくれてありがとう」
唐突な礼だったが、なんの事か分かった高坂はふんわりと笑った。
「……好きな人から熱烈なお誘いがありましたので」
「大切にする」
「末永くよろしくお願いします」
どうするのが一番なのかは分からないけれど、良い方を選ぶことが全てではないと教えてもらったから。
高坂Aはこの世界で幸せになる事を信じて、皆が待っている学園へと歩いていった。
fin
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時